僕のお金を知らない大人に使われるのは嫌だ

 これは加奈さんが、かつて読んだ本に記してあった「3分の1は将来のため、3分の1は今の自分のため、3分の1は同胞のために使いなさい」という格言がベース。当時、小学校4年生の和樹君が「4分の1のほうが計算しやすい」ということで4分の1に決定したのだ。ところが4分の1のお金の使い方を決めるのに悩んだ。震災復興関連など、寄付を必要としている人々は国内にもたくさんいる。しかし、使い方は和樹君の一言で決まった。

インドのサンジャ君の「チャイルド紹介カード」を持つ和樹君
インドのサンジャ君の「チャイルド紹介カード」を持つ和樹君

 「僕のお金を知らない大人に使われるのは嫌だ。僕と同じくらいの年で、学校に行けなかったり、ご飯を食べられなくてお腹を空かせている子どものために使いたい」。そこで和樹君は、半分は貯金、4分の1はずっと欲しかった漫画、そして残りの4分の1を募金することにした。

 加奈さんが募金先として選んだのは、世界の子どもを支援する国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンが行うチャイルド・スポンサーシップ。支援する地域に住む子ども(チャイルド)と文通するなどの交流ができる。寄付金はチャイルドがより良い環境で成長できるように地域全体を改善するために使われ、支援の成果が長続きする寄付プログラムであることをうたっている。

 いつか訪問する夢をかなえやすいアジアのチャイルドを希望したところ、和樹君と同い年のインドに在住するサンジャ君に決定。サンジャ君の写真やプロフィールが届くと、「ちょうど僕と同じ4年生、この子が学校にちゃんと通えるようになる」と、とても喜んだという。

 「手紙や写真のやりとりができるので、息子も寄付している実感を持ちやすいのがいいですね。かねがね主人と世界の多様性を知るなど、グローバルな視野を持ってほしいと考えていましたが、寄付もグローバルな視野も親が押しつけては、これから反抗期を迎える息子にとっては逆効果。きっと反発したと思うのです。自然に楽しく世界と関わっていくことができる方法を探していたところでもあり、とてもいいタイミングでした」と加奈さん。

 チャイルド・スポンサーシップは、1カ月4500円(1日約150円)を、貧困問題に直面する子どもに支援するシステムだ。

 「働いていても、2人の子がいるので、毎月4500円の寄付は決して安い金額とはいえません。我が家は週末に家族4人でランチをすることが多かったのですが、これを減らして家で食事をすれば4500円浮くよ、という息子の提案もあり、昨年の春からチャイルド・スポンサーシップを始めました」。

サンジャ君に手紙を書く和樹君
サンジャ君に手紙を書く和樹君