使い勝手がよく、税負担も軽いバウチャー制度

 政府がオカネを出す形にも提言があります。事業者にオカネを出すのではなく、利用者がサービスを受けるごとに使える“バウチャー形式”にすることです。利用者が自分にとって使いやすい事業者を選べて、利用料金の割引が適用される制度が拡充されていくといいのではないでしょうか。

 これから少子化の時代に、施設という“ハコ”を増やすのは現実的ではありませんし、すでにある病児保育サービスを安く使えるようにするほうが政策としても効率的。施設や人員を維持するコストをかけるより、“利用ごとに費用を負担する”ほうが、貴重な税金を使う効率としても優れています。

 しかし、国の保育政策の現状を見ると、厚生労働省は待機児童対策で精いっぱいです。病児保育などは、周辺保育の隅っことして優先順位が低いために、なかなか政策の対象となる順番が回ってきません。

 より敏感に反応するのは自治体です。首長の判断次第で比較的柔軟に制度を変えられるので、国と比べて機動力が高いと感じます。実際、東京都内でも渋谷区、千代田区、北区、足立区では、フローレンスの利用にバウチャーが適用される制度が始まっていて、利用者の実質負担は1時間当たり約1000円にまで下がります。これなら「ファミリーサポートセンターとあまり変わらない値段」と、より気軽に使っていただけるようになります。

 これらの区でバウチャー導入がされたのは、僕が渋谷区の議員向けに開いた勉強会がきっかけで、意欲の高いある区議が制度整備に積極的に動いたからでした。渋谷区で事例ができると、一つのモデルとなって、他の区も続けて導入が決まりました。もちろん、フローレンス以外の事業者も選んで使えるバウチャーなので、利用者にとっては使い勝手がいいはずです。施設型病児保育が一軒もない北区に住む方々にとっては、かなり有益なサポートになっているのではないかと思います。