どんなに忙しくても、好きなことをするためなら時間を見つけられる

小室 今のお話で印象的だったのが、各支店での出来事を会長が詳しくご存じだという点です。また、多面評価シートへの細かい記入も見ていらっしゃるし、多面評価シートに書いている人の営業成績が高いか低いかまで知っていらっしゃる。お忙しい中でも、現場の状況を細かく把握する時間を生み出していらっしゃるんだなと思いました。

 これまで900社以上の会社へのコンサルを通して感じたことなのですが、猛烈に残業が多い会社の役員の方は、社員一人ひとりのことをあまり把握していません。ご自身が相当忙しいので、社内を見渡す時間がないのです。そこでぜひ、鈴木会長ご自身がどのようにタイムマネジメントをしてそうした時間を生み出しているかを教えていただきたいです。

鈴木 証券会社というものはどの会社でも扱っている商品にほぼ変わりがありません。例えば、うちで株を買っていただこうが、他社で買っていただこうが、同時に買えば同じ値段です。つまり、うちを選んでもらうには、わが社で働く「人」で選んでもらうしかないのです。ですから、社員のロイヤルティを高めて、やる気を上げることが非常に重要です。そこに関係してくる仕事には「特に時間をつくって取り組まねばならない」と思っています。

 口ではどんなに「忙しい」と言っていても、好きなことって時間を見つけてなんとかやるものじゃないですか。それと同じで、まとめて時間が取れなくても、少しずつならある。なので、全社員についてちょこちょこと見るようにしています。

 弊社には、半年に一度、優秀な実績を上げた社員を表彰する制度があります。営業では毎回400人くらい表彰しているのですが、そのうち3分の1は“常連組”。3分の1は“準・常連組”、残るの3分の1は初めて表彰された社員や新人という割合になっています。

 私は特にこの約400人弱の成績が優秀な社員の考えをチェックしています。その情報を基に、人事に「あの社員は次にこの部署に行きたいと言っていたね」などと言うと、人事は焦ってしっかり見るようになります(笑)。優秀な社員がいればTOEICの点数など必要な情報も伝えながら、海外でもどこでも行きたいところに行かせるようにしています。

 「まずは今の場所で高い成績を上げて、こういうところに行きたい」というやる気のある社員の思いを後押しするために、会社側が成績や希望などをしっかり見ておかないといけないと思います。

Q) 法人営業担当の社員のうち、3分の1を女性にしたというお話がありましたが、その試みはスムーズに行きましたか?

鈴木 全支店の法人営業担当の3分の1を女性にしたのですが、しばらく経って、前任の男性や支店長が女性の営業にずっと同行していることに気づきました。そんなことをしていては女性担当者はいつまでたっても独り立ちできません。「男性と同じように、全部新任に仕事を任せろ」「会社で決めたことなのだから、もし新任の女性社員がうまくいかなくても、前任者や支店長の責任ではない」と伝え、うまくいかなければ配置換えもしました。