「毎日20時に電話を欲しい」と言うお客様にどう対応したか

Q) 19時に帰る代わりに朝早く出社したり、自宅で仕事をしたりするなど、隠れて仕事をする社員はいませんでしたか?

鈴木 ある支店での話をご紹介します。「あるお客様から『必ず20時に電話をして、マーケットの話を聞かせてほしい』と言われている」という報告が上がってきました。相手は大手の取引先だといいます。「このお客様がいなくなったら大変なことになるし、20時だから自宅で対応しなければならない。一体どうすればいいでしょうか」という相談でした。

 私は、「申請書を出して、20時に電話をしてさしあげてもいい。でも、まずはそのお客様に会社の事情を話し、『違う時間に電話をしたい』と相談してみなさい。もし、ダメだと言われたら、そのお客様を諦めていい」と伝えました。

 しかし、彼は諦めませんでした。大手のお客様を担当するような営業担当は、やはりお客様と十分に信頼関係を構築できています。結局お客様に別の時間にお電話することを納得してもらうことができ、無事19時に帰れるようになりました。

 その他「お店に20時に電話したのに誰もいないじゃないか!」とご立腹になるお客様もいらっしゃいましたが、時間と努力の積み重ねによって、お客様にも少しずつご理解いただいてきたように思います。

 弊社には部下が上司を評価して人事に直送する「多面評価」という制度があります。支店長の点数を他の社員がつける仕組みで、評価欄には何を書いてもいいのですが、実は男性でここに何かを記入する人はあまりいません(笑)。下手なことを書いて人事ににらまれたらまずいとでも思うのでしょうか。ところが、女性はきちんと書くのです。

 この評価を見て分かったことなのですが、会社がどんなにいい取り組みをしても、文句を言う人は男女問わず一定数います。何事も正規分布に沿っているので、70%くらいの人が賛同してくれたら、それでいいと思っています。

 ただし、高い成績を上げている人が書いていることは間違いなく当たっています。文句ばかり言っている人は成績がいまひとつであるケースが多いようです。

 私が支店に行ったときは、「多面評価などの書類はきちんと書きなさいよ。あなたがどこに行って何をしたいのかを人事は全部見ているからね」と社員に伝えています。こういった取り組みの積み重ねで、会社に対して自分の気持ちを伝えることは重要なのだと認識するようになってきています。