ホームパーティーのケータリングでお小遣いを稼げるようになった

羽生 親としては何でも与えるのが愛情、とも考えがちですが、そうではないと。

行正 親が何でもサポートする、つまり、いつまでもお金を出すというのは、実は子どもを苦しめることにもなるんじゃないかと思うんです。ゴールが無限に延長されて、どこまで頑張っていいか分からない。私がそうだったように、「留学の9ヶ月間だけ」とリミットを決められるほうが、かえって集中して頑張れるし、気持ちも楽になるんじゃないかと思います。お金も不自由するくらいがちょうどいい。私自身はそれがとってもよかった。

 限られたお小遣いを工面してできる唯一の娯楽が、映画館で映画を観ることで、その時間が勉強から解放される至福のひと時でした。当時は『ニューシネマパラダイス』などが上映されていましたが、まばたきするのも惜しい気持ちで、1シーン1シーン、音楽まで覚えています。映画を録画したビデオをもらったら、テープが擦り切れるまで観ていました。繰り返し観ることで英語を覚えましたし、映像制作の仕事にも活きる経験になりました。

羽生 お金がないからこそ、得られるものもあるということですよね。私の場合は大学卒業後にうまく就職できずに貧乏生活をしていた時期がございまして、公園の水を飲んでも「水っておいしいな」と感謝できた経験があるのですが、当時のハングリーな感覚が、今のベースにもなっていると実感しています。ところで、お料理へのご関心はいつ頃から?

行正 もともと食べるのは大好きでしたが、大学時代に寮のキッチンで料理を作っていたら、同級生や先生からホームパーティーのケータリングを頼まれるようになって。カリフォルニアロールなんかをせっせと作ってアルバイトとしてお小遣いを稼げるようになりました。そして大切に貯めたお金でヨーロッパ旅行に行ったりしていました。