「女性の役員や管理職が多く、活躍している会社にはどんな秘訣があるか」――先日、小室淑恵さん率いるワーク・ライフバランス社主催で、経営者限定の勉強会が行われました。ゲストスピーカーは、大和証券グループ本社取締役会長・鈴木茂晴さん。前回の記事「大和証券 第3子以降出産社員に200万円の祝い金」に続いて、今回の記事では「ワーク・ライフバランスは本気度が重要だ」というお話です。上・中・下の2つめの記事をお届けします。

19時に帰らない支店には「支店長に『転勤候補になっているよ』と言いなさい」

大和証券グループ本社取締役会長・鈴木茂晴さん
大和証券グループ本社取締役会長・鈴木茂晴さん

大和証券・鈴木会長 仕事と育児の両立を支援する制度を整えていくなかで、今度は男女ともに働きやすい会社を目指そうと、2008年ごろからワーク・ライフバランスの推進に力を入れました。

 私達が男女ともに働きやすい会社を目指す理由の一つ目は、持続可能な企業になりたいからです。毎日夜遅くまで残業したり、土日にまで働いたりしていたら、短期的に利益を上げることはできるかもしれませんが、いつか息切れしてしまうでしょう。会社を持続的に発展させるためには、社員の働き方も持続可能なものにしなければならないのです。

 そして、社員達にはワーク・ライフバランスというよりも「ワークハード・ライフハード」を大事にしてほしいと思っています。つまり仕事にもプライベートにも全力で取り組み、両方充実させてほしいと願っているのです。

 ワーク・ライフバランスというとなんとなく「バランスを取る」というイメージがあります。でも、仕事とプライベートを充実させるためには、限られた時間内に成果を出すことが重要です。それを実現するために2009年からは、営業店を中心に19時前に退社させるようにしています。毎日何があっても全員、19時には退社するというルールです。

 最初は「それは無理ですよ。仕事が増えているのに、早く帰れなんて……」と言われました。でも、私は「必ず実現したい」と言い続け、「毎日何時に店を閉めたか報告しなさい」と伝えました。

 「19時に帰れ」というと、皆遅くとも20時までには退社するようになります。だいたい19時15分から20分くらいの間には帰るようになる。しかし、徐々に退社時間が遅くなる人が数人出てきます。少し退社時間が遅くなる人が出てきたタイミングで人事担当者を呼び、「支店長に『転勤候補になっていますよ』と言いなさい」と伝えました。こういう話はものの5秒で全国の支店に伝わるものです(笑)。

 当社には前身の企業も入れると110年以上の歴史があります。100年以上続けてきた働き方を本気で変えようと思ったら、最初はある程度の強制力を持たせなければ定着させることができません。こうした試みの結果、少しずつ残業時間が延びてきた社員達も働き方を変えることができました。

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