各自の目標は、シンプルにデジタルに設定する

Q) 例えば、社内のリーダー枠1人分に対して3人の候補が挙がったときに「あの人はいつも頑張っているからね」という一言が、最後の決め手になることも多いと感じています。成果主義にはどのように取り組んでいますか?

松本 私が会長に就任した当時もカルビーは決して悪い会社ではなかったのですが、売り上げは停滞し、利益も少なかったんです。「では、そのポテンシャルをどう引き出すか」というのが課題でした。

 ちょっと変えることで、会社はうまくいくようになるんです。

 最初に取締役会で株主との契約を書面にします。「今期はいくら稼いで、いくら儲けます」と。ビジネスはゲームですから。そのほか、いくつかの簡単な契約を交わして、取締役会で承認を得て、私と社長とで数字に基づいた契約を取り交わします。

 社長と直属の部下が契約を交わし、その直属の部下が契約を交わす……と、社員の数だけ契約書が存在します。すべてを契約に基づいて評価するので、部下が上司にいくらゴマをすってもダメです。

 その契約の中で、成果や目標をできる限り数値化してもらっています。シンプルにデジタルに置き換えて明記することが大切です。

能力に差がない男女がいたら、昇格させるのは女性

後藤 確かに成果を数値にして把握することは、評価のうえでも大事だと思います。

 一方で、松本が会長に就任したとき、「人の能力は正確には把握できないが、男性と女性がいて、能力が全く同じだったら僕は女性を昇格させる。これは僕のポリシーだ」と言っていたのが印象的でした。それに対して「逆差別だ」と言う男性もいましたが、松本は譲りませんでした。

松本 そうですね。うちの会社は比較的自由だと思いますが、譲れないものが2つだけあります。一つが、ダイバーシティー。ダイバーシティー推進を嫌う会社はたくさんあるので、嫌だったらよその会社に行ってくれと。そしてもう一つが、社会貢献。

 この2つについては委員会を作って取り組んでいて、これだけは何がなんでも譲らない。ただし、それ以外は何をしてもいい。それくらい何か頑固になるものがあってもいいと思います。