多くの人を巻き込み、ノー残業デーの退社率が約95%

油谷 ワークライフバランスを推進するに当たり、事務局としては色々な人を巻き込むようにしました。事務局から発信するだけでは弱いので、社長が社員の前で話をする際には、必ず「限られた時間で成果を出すことが大事だ、という話をしてください」と依頼しました。プロジェクトのリーダーには「自分達がどういう取り組みをしているか」「どういうところで働き方の見直しが役立っているか」を、色々なところで話してくださいと伝えました。

長谷川 「残業に支えられている経営は、将来行き詰まる。将来のことまで考えて、付加価値を付けることが大切なんだ」ということを何度も伝えました。

 「経営者としてもワークライフバランスの推進に対し、率先垂範することで決意を示してください」と言われ、常務以上の経営トップの会議で“スタンディング会議”を実施しました。ほかの役員からは「なんで立って会議をしなくてはならないんだ」と言われましたが、油谷さんが「経営者は役割の重要性からも、知力や体力が求められます。立つことによって脳が活性化し、会議の効率化・活性化の両方に繋がります」とズバッと言ってくれ、みんなしぶしぶ続けることになりました(笑)。

油谷 これまでもノー残業デーはありましたが、録音された放送が流れるだけで形骸化していました。労使の委員会で「まずは長時間労働の削減として、もう少し実現性を高めよう」と全社一斉でノー残業デーに取り組むことにしました。

 組合が社長の写真と「帰れ」というコピーを掲載したポスターを作りました。その後、さらにノー残業の大切さを身近に感じてもらうために、それぞれの事業本部長も顔写真を載せて貼り出しました。モノクロに赤字で「帰れ」と文字がある、かなり怖いポスターです。

 この月のノー残業デーの退社率は94.8%でした。

 その取り組みについては業界紙でも取り上げられました。業界紙は発注者さんも読まれます。業界紙で予め告知をしているのに、ノー残業デーの日の夜に会社にいたらお客様におかしいと思われてしまいます。こうして外堀も埋めて「帰らざるを得ない状況」を作りました。

 さらには、退社率94.8%という結果を受けて、同業他社に「業界一斉でやりませんか」と呼びかけました。その後、計14社で実施することになり、14社平均の退社率は82.3%でした。

 14社で話し合い「“ノー残業の輪”をもっと広げたいね」ということになり、さらに19社で行いました。今では、建設コンサルタント業界全体で行っています。