ダンスや楽器、先生の得意な音楽を子どもたちにも伝えたい!

 もちろん音楽を取り入れた保育は、リトミック担当の先生が一人で行っているのではない。

 「音楽が好きなスタッフが自然と集まってくるんです」と尾﨑さんが言うように、保育士やスタッフには楽器が演奏できたり、ダンスが得意だったりと、それぞれの人生で音楽に親しんできた人が多い。音大や音楽専門学校の出身者もいる。この保育園の噂を聞き付けて、働きたいと問い合わせてくるそうだ。

 英語を話せるスタッフもおり、大使館などが近く国際色豊かな子どもたちが通う園ということもあって、英語の歌を歌う機会を増やしているという。

 「『子どものために何ができるか』をいつも率先して考えてくれるスタッフや保育士ばかり。先生同士の仲もとても良く、子どもや保護者とコミュニケーションが密に取れています。そのおかげか、コミュニケーション力が高まり、よくしゃべるようになりますね。『この園の子は言葉が早い、表情が明るい』なんて保護者の方に言われるんですよ」。毎日、子どもと先生たちを見守る施設長の橘田麻衣子さんは、そう話す。

約40分のリトミックの時間の中では、楽器に親しむ機会も。この日は鈴に挑戦
約40分のリトミックの時間の中では、楽器に親しむ機会も。この日は鈴に挑戦

 「まだ言葉を話せない1歳児でも、先生たちが一緒に歌を歌ったりしていると、うれしそうに体を動かしたり、声を出したります。他の園に転園した保護者からよく言われるのは『転園先で1歳、2歳児の教室が静かで驚いた』と。この園の子どもたちはよくしゃべり、自己表現も積極的。音楽で歌ったり体を動かしたりして表現することが日常にあるからでしょうね」(橘田さん)

 スタッフたちの長所を生かして、保育にダンスなどを取り入れたり、年に一度保護者や在園児、卒業生を招いてスタッフによる演奏会を行ったりすることもある。また、年に2回は保護者に子どもたちの音楽への取り組みを見てもらうことにしている。

 「年度が始まったばかりの5月に一度リトミックを見学してもらい、翌年の1月に子どもたちの音楽発表会で再びその成長を見てもらうんです。子どもの健やかな成長のためにも、園と保護者の協力は重要だと思っていますので、そうしたアウトプットの機会を用意するようにしています。もちろん日ごろから送り迎えや行事などで、保護者とはまめに話をしてコミュニケーションを大事にしています。保護者の方と一緒に子どもの成長を見ていきたいですね」(尾﨑さん)

カタツムリの絵本を読んでもらった後は、みんなでカタツムリになって音楽の変化を聞きながら体で表現。頭からツノがニョキニョキ!
カタツムリの絵本を読んでもらった後は、みんなでカタツムリになって音楽の変化を聞きながら体で表現。頭からツノがニョキニョキ!

 普段も子どもの様子を書いた連絡ノートや尾﨑さんのブログなどで園の様子を報告。保育士やスタッフを多めに配置していることもあり、保護者もお迎えがてらちょっとした育児相談を聞くゆとりを持つようにしているそう。