そうか。いくら子どもがひどい黄疸が出ていようと、ここはアメリカ。ナースやドクターが勝手に私の子どもに私の意思を無視して処置をしてはいけないのだ。

 初めて母親となり、右も左も分からない状態でも、自分の子どもに対してどうしたいのか、何人ものお産を経験してきているドクターやナースではなく、新米母である私の意見が尊重され、また、私が許可しないとミルクすらもあげてもらえないのか。

 「今は哺乳瓶であげてください。とにかく黄疸が良くなることが優先です」と伝えるとナースは「OK!」と軽やかに言って、使い捨ての乳首と「Ready to Drink」(出来上がりのミルク)のミルクを息子にあげた。

 ずっと張り詰めていた気持ちが少し和らいだように思えた。と同時に、母親としての実感と責任を強く感じた日だった。

お湯も調合もいらない「Ready to Drink」

 この「Ready to Drink ミルク」について詳しく紹介しよう。

 アメリカには日本と同様、粉ミルクの他に、外出時や子どもを預ける際にとても便利な「Ready to Drink」というミルクがある。

これが「Ready to Drink」。常温で保管することができ、使う時に専用の乳首をつければ良いだけ。夜中の授乳や外出時などに便利で、少々高いが人気の製品だ
これが「Ready to Drink」。常温で保管することができ、使う時に専用の乳首をつければ良いだけ。夜中の授乳や外出時などに便利で、少々高いが人気の製品だ

 「Ready to Drink」、つまり、すぐ飲めるミルクは、お湯も調合も行う必要がなく、そのままパッケージから開けてすぐに飲ませることができるミルクである。

 しかも、このミルク専用の使い捨てニップル(乳首)まで販売されており、ふたを開けてニップルを付け、そのまま常温であげることができるのだ。

 通常のミルクだと、外出する際は水筒に入れた白湯と水、哺乳瓶に粉ミルク……と何かと荷物が増えるが、アメリカではこの「Ready to Drink」のミルクと使い捨てニップルを持っていればOK。飲ませた後はゴミ箱に全部捨てればいいのだから、逆に外で母乳をあげるほうが面倒くさいということになる。実際に私も何度か外出時に使ってみたが、本当に便利。強いて言えば、味があまりおいしくないこと。

 息子は、初めのうちはこの「Ready to Drink」のミルクを飲んでいたが、数カ月外出する機会がなく「Ready to Drink」のミルクをあげていなかったら、味が嫌になったのか飲むのを拒否するようになってしまった。そのため、外出時は母乳か粉ミルクをあげることになった。

米国のミルクはnot人肌 常温のペットボトルの水を混ぜて作る

 ちなみに、日本では、粉ミルクは70度以上の白湯で溶かして、人肌まで冷やしてあげるのが“常識”だが、アメリカでは粉ミルクはペットボトルの常温の水を混ぜて飲ませるのが常識。手間がかからないのだ。

 まず、白湯でミルクを溶かして、人肌まで冷まして……などとやっている人はまずアメリカでは見かけない。そんな人がいたら、おそらくアメリカ人ではないだろう。

 逆に、「Ready to Drink」のミルクを日本の友人に話すと皆、目を丸くしてびっくりする。母乳育児推奨に日米の差はあまり感じなかったが、ミルク育児については大きな違いがあるようだ。