Q2.「下の子を産むと上の子が追い出される」という制度は少子化を加速させると思われますが、いかがでしょうか?

 今回の報道を聞いた親たちは「うっかり妊娠できない」と思ったと思います。1人目を保育園に入れるだけでも大変で、何カ月も不安な時期を過ごし、ようやく得られた安住の地であった。なのにそれを再び奪われてしまうのです。しかも数カ月後には、上の子と下の子の「保活」を再び始め、同時に成功させなければ職場復帰はできません。いくら加点を多くしてもらっても、空いてなければ選考(利用調整)はないのです。

 親の都合だけではありません。子どもも、1~2歳ともなれば保育士と愛着関係を強め、お友だちの刺激を受けながらいろいろなことに挑戦し、自我を育んでいきます。いきなり慣れ親しんだ保育園に行けなくなるだけではなく、数カ月後にはまったく違う保育環境に入らなければならないかもしれないというのは、子どもにとってもデメリットです。

 親の自衛策としてバースコントロールが必要になり、そのために子どもを授かるチャンスが減るとしたら、少子化対策に逆行することは間違いありません。

Q3.しかし、最近は「育休3年OK」など企業側の制度の充実もあり、長期間家にいる育休中のママが多くなる可能性もあります。「保育園をずっと利用し続けるのはズルいのかも」…と思う気持ちが他の入園希望家庭から挙がるのは否めません。ご意見をお聞かせください。

 親たちが神経質になってしまう一番の原因として、保育園に入るのが困難な現状があります。年度途中でもいつでも、希望した時期に保育園に戻れるのであれば、上の子を家庭で過ごさせる選択をする人もいるでしょう。待機児童問題がそんな親の選択肢を想定外にしていると思います。

 育休中に保育園を利用するのが「ズルい」というのは、保育園が足りなくて保護者同士で取り合いをしているような状態になっているから出てくる言葉だと思います。保育園が足りないのは自治体の責任です。自治体は、保育園不足が保護者同士の利害関係にならないように、ゆとりをもって保育園整備をし、育休中どうするかも、家庭がそれぞれの事情で選べるようにするべきです。

 そして、育休中の上の子を保育園から出しても数カ月後にはその子どもが待機児童となり、トコロテン式に待機児童が入れ替わるだけの施策は、待機児童対策とは言えません。

 子育て支援はもっと広い視野で行ってほしいと思います。上の子が1・2歳のうちに下の子が産まれるというのは、核家族の子育てとしては大変なものです。「保育短時間」の認定でもいいので、保育園の助けを得られたほうが、親も子も助かるでしょう(親が働いていない家庭も利用できれば、大きな子育て支援になります)。上の子が3歳以上の場合も、集団保育の場での教育が意識され、やはり登園が望まれると思います。

 そう考えると、育児休業が長くなっても継続利用を選択できたほうがよいのです。そのためには、やっぱり保育園を増やす、それにつきると思います。

(取材・編集/日経DUAL編集部)