雅楽師として活躍する東儀秀樹さんは、55歳にして8歳の子どもを育てるパパでもあります。「年を取ってからの子育てに悪い事は一つもない」と言い、著書『東儀家の子育て 才能があふれ出す35の理由』(講談社)も出版した東儀さんに子育てについての考え方、子どもとの接し方など聞きました。

とうぎ・ひでき 雅楽師。1959年東京生まれ。父の仕事の関係で幼少期を海外で過ごす。高校卒業後、宮内庁楽部に入る。宮内庁楽部在籍中は篳篥(ひちりき)を主に、琵琶、鼓類、歌、舞、チェロを担当。1996年アルバム『東儀秀樹』でデビュー。2000年『TOGISM 2』で日本レコード大賞企画賞を受賞。絵本『光り降る音』『天つ風の音』『星月夜の音』(文・かんのゆうこ)では挿絵を担当。皇學館大学特別招聘教授、また上野学園大、 名古屋音大、池坊短大、大正大学、國學院大の客員教授を務める。

子育てのおかげで少年時代をもう一度やり直している

――ご子息が8歳というこのタイミングで本を出した理由を教えてください。

 子どものことを本にするというのは、出版社から声を掛けられるまで意識していませんでした。今まで子育て本は、子どもを立派に育て上げ、ちゃんと結果を出した人が出版するものだと思っていましたから。僕の息子の「ちっち」は、まだ8歳。これからグレるかもしれないし、僕と仲が悪くなるかもしれません。

 でも、子育ての渦中だからこそ熱く書けることもあります。後から振り返って書くと、昔を美化してしまうかもしれない。だから、この本では今この瞬間を日記のようにそのままつづりました。

――実際に本を読むと、東儀さんが深く子育てに関わっていることが分かります。

 周りの友人などの子育てを見てきて、うちの子育てはちょっと様子が違うぞというのは感じていました。みなさん、大変な思いをして、子育てが重労働になってしまっている。父親が子育てに参加しない、興味がないわけではないけれどよく分からないというのも耳にします。

 ママ友と集まっているときにも、ちっちとのエピソードを話すと「へぇー、すごいね」「それやってみよう」なんて感心されます。やっぱりうちの子育ては違うんだ、それを伝えることで、人のためになっているのかなという実感があります。

 「すごいね」と言われても、僕は子育てを頑張っているつもりはありません。頑張らずともちっちといると自然とわくわくしてしまうし、楽しくなってしまうんです。

 自分の子どもが小さいうちにたくさん一緒にいるというのは、かけがえのない大切な時間です。それを伝える手段として、本にまとめるのもいいなと。

――ご子息が誕生したのは東儀さんが47歳の時。その年齢での子育てはいかがですか?

 年を取ってからの子育てに悪い事はないと思いますね。親が一通りのことを体験しているので若いときに比べて戸惑うことが少ないですから。

――東儀さんは元々、子ども好きだったのでしょうか?

 子どもは苦手な方でした。でも、なぜか子どもと動物には好かれる質なんですよ。こっちは苦手なのにすぐ向こうから寄ってくる。女性にも好かれますけれど(笑)。

 人前で他人の子と遊ぶのも、なんだか気恥ずかしくて。今はちっちを溺愛していますが、子どもは苦手なままですね。

 子育てをしてみていろいろな発見がありました。大人だと忘れてしまっていることも、子どもの目線になってみると様々な発見があります。子育てをすることで、大人はそれをスキルとして身につけることができます。僕はちっちと一緒に少年時代をもう一度やり直しています。ちっちと一緒に僕も成長しているんですね。