大人の間に連れていったから社交的な子どもになった

――8歳のちっち君はどんな子に育ったのでしょうか。

 社交的だし、人と違うことを恐れない子ですね。マイナスなこともワクワク報告してくれるんです。
 先日も「○○君はちっちのことが一番嫌いなんだって!」と教えてくれました。

――「一番嫌い」ですか。そのとき、東儀さんはどうされたんですか?

 そのときは一緒に「何かしたかな?」と原因を考えて、何も思い当たらなかったので、「ちっちにはこんな素敵なお父さんがいるからやきもち焼いてるんだね!」なんて笑い合いました。
 子どもには、全部人って同じじゃないんだ、それぞれ違う考えを持っているんだ、好き嫌いがあって当たり前なんだって折に触れ教えています。

 ちっちは幼稚園の頃から、いろいろな人と話すのが好きな子でした。公園に行くと別の幼稚園の子どもたちがいることもあります。そういうとき子どもって、幼稚園ごとにグループを作ってその中で遊ぶんですね。でもちっちだけは、「ほかの幼稚園の子とも話してみたい」って、別の幼稚園のグループに交じって遊ぶんです。

 思えば赤ちゃんの頃も社交的でした。僕がちっちを抱っこして近所を散歩していたら、ほかの人を指さしてその人の前に連れて行けって言うんです。好奇心の塊なんですね。

――どうして社交的になったのでしょうか?

 意識して大人の群れにちっちを連れて行くようにしていたからでしょう。
 大人は子どもに対して優しいです。優しく話しかけてくれるし、自分の話を聞いてくれる。同年代の子どものように、おもちゃを取ったりたたいたりもしません。ちっちは大人と接して、人って優しいんだ、触れ合うと面白いんだと感じたようです。

 公園によく母子の集団がいますが、お母さん同士が気を使い合っているように見えます。その頃の子どもはまだしゃべれないから、おもちゃを取ったとかたたいたとかトラブルも多いですよね。子育てでは、親も子もニコニコしているのが一番。僕は同年代の子ども達が公園デビューする頃、ちっちを大人たちの中に連れ出していました。
 そのおかげか、ちっちは言葉によるコミュニケーションが上達しました。言葉をしゃべるのが早く、また文章の組み立てがうまい子に育ちました。

 今ではすっかり、ほかの子より余裕のある子どもに育ちました。子どもの世界ではおもちゃの取り合いでケンカになることがよくありますが、ちっちはほかの子におもちゃを貸してあげます。自分が面白かったからほかの子にもその面白さを伝えたいんです。自分が大人に優しくされたから、人にも優しくできるんでしょうね。

※次回「子どもには無限の可能性。伝統は強いない」に続く

(取材・文/福村美由紀 写真/吉村永)