子どもの話は面白い。その瞬間に聞かないともったいない

――東儀さんのお父様は、子育てに協力的だったのでしょうか?

 うちは典型的な昭和のサラリーマン家庭でした。東儀の名は母から来ていて、名前だけ雅楽師の家系だったんです。

 父は「子育ては女の仕事だ」というタイプ。仕事が忙しく、子どもに会えるのも日曜だけでしたが、そのときもべったりという感じではありませんでした。

 僕の子育てとは大分違う感じですが、別に父が反面教師になっているというわけではありません。ちっちの子育てには、好奇心旺盛でいつもワクワクしていたいという僕本来の性質が関係しているように思います。

――子育てで大切にしていることは?

 子どもの話をしっかり聞くこと。子どもが話し始めたら、顔を向けて一部始終を聞く。僕の場合、聞きたくなっちゃうから聞くんですけどね。

 子どもの話は面白いです。大人はこんなこと思いつかないなというようなことを言い出します。2年3年すると話の内容も変わってきてしまうので、そのときそのとき、しっかり聞いてあげないともったいない。

 僕は家で仕事していることが多いのですが、子どもが話したがったら今やっている作業を中断して聞きます。「あとでね」と言って、子どもが一番話したいタイミングを逃してはいけないと思います。

 「先生に誤解されて怒られた」「友だちに急に叩かれた」など、子どもは外で理不尽な目に遭ってきます。それなのに、家でも「あとでね」なんて疎外感を味わわせてはいけません。外で何があっても、家に帰れば誰かが話を聞いてくれる。そういう安心感があれば、子どもは強くなれる。これからの人生を強く生きていけます。

 もしこれからちっちがいじめられたとしても、きっと相談してくれると思います。そんなときのためにも、家は最後の砦にならなくてはと思います。