外見と内面の両方の美しさを求められるミス・ユニバース世界大会で優勝したのが2007年。1年半近くにわたりニューヨークを拠点としたミス・ユニバースの活動を終えた後は、母と共に設立したダンススタジオで、アーティスティック・ディレクターとして講師を務める森理世さん。今度は自身が子ども達に努力し続けることの大切さを教え、その成長を見守る立場になりました。

 前回の記事では、祖父や母から、努力や根性、礼儀など人生で大切なものを徹底的に教わった森さんの幼少期を紹介しました。今回は、ミス・ユニバースとなったときも大切にした母からの教え、そして子どもの世代に伝えていきたい思いなどを伺っていきます。

母のような指導者になるのが夢だった

ダンサーは一日にして成らず。言葉ではなく経験を積ませることで小さなダンサー達を大きく育てていきたい、と森理世さんは言う
ダンサーは一日にして成らず。言葉ではなく経験を積ませることで小さなダンサー達を大きく育てていきたい、と森理世さんは言う

日経DUAL編集部 「努力、忍耐、根性」を家訓におじいさんやお母さんから徹底的にしつけられた一方で、筋が通っていればやりたいことを自由にやらせてもらっていたとのこと。その経験はダンスを教える立場となった森さんにどう生かされていますか?

森理世さん(以下、敬称略) 今、2歳半の子達がいるベビークラスから高校生クラスまでをメインに教えています。私も母のように「何かをしたい」という子どもの自主的な気持ちを育ててあげられる先生になりたいと思っています。

 ダンスは1日や1週間だけでうまくなるものではありません。我慢強さや努力し続けることなど、まさに努力、忍耐、根性が大切です。それを、ただ口うるさく言ったところで子ども達は理解しない。できないことを一生懸命練習する、諦めない気持ち。苦手なことを克服したときにつく自信。そして、体を動かすことの素晴らしさ! 押し付けではなく、実際に見せて経験させ、自主性を重んじて指導するのが一番だと考えています。何かを達成したときの喜びや清々しさみたいなのを繰り返すと、子ども達は絶対に辞めませんし、チャレンジを続けます

―― お母さんは、学校の成績に対しても相当スパルタだったのでしょうか?

 それが、テストの結果に関しては何も言わなかったですね。私は塾にも通いませんでした。母は点数をつけられるのがものすごく嫌いなんです。「数字ばかり気にしていると、感性が磨かれない」と言うんです(笑)。点数で判断されるのは学生時代だけなのだから、そんなことに躍起になっても仕方がない。むしろ、学校の授業中にどれだけ集中して先生の教えを聞いて学べるかが大切だと。「私は塾に行ってるから、別に学校の授業は聞いていなくていい」という態度は、先生方に対して失礼そのものともよく言っていましたね。

小学生のときの理世さんとお母さんの育子さん
小学生のときの理世さんとお母さんの育子さん

 ダンスの振り付けを含め、芸事というのは自分の目で見て盗んで学ぶもの。先生は「私の背中を見て覚えろ」という姿勢です。そういう意味では、私は母やダンスを通して、何かを教わることへの姿勢や集中力を鍛えられていたのかもしれませんね

―― とはいえ、テストの点数がものすごく悪いときは?

 「次に期待しているわ」と、またしても姿勢をピンと正した母にピシリと言われて終わりでした(笑)。