妊娠したにもかかわらず、妊娠が継続できなくなることを指す「流産」。経験者にとってはつらい出来事ですが、実は1人の女性が妊娠するなかで約15%の割合で起こる、比較的身近なものと言われています。厚生労働省不育症研究班の調査によると、妊娠経験者のうち1回の流産経験者は約40%、2回は4.2%、3回以上は0.88%いました。年齢が35歳を過ぎると流産率は急激に高まるというデータもあり、こうしたリスクを知っておくことは大切です。
 流産の8割は胎芽・胎児側の染色体異常が原因ですが、なかには妊娠しても流産や子宮内胎児死亡などを繰り返し、出産に至らない「不育症」という症状が原因の場合もあります。不妊症に比べてあまり知られていない不育症を専門とする、杉ウイメンズクリニック不育症研究所院長の杉 俊隆医師に、流産と不育症について伺いました。

流産の8割は赤ちゃん側の染色体異常による自然淘汰

杉ウイメンズクリニック不育症研究所院長の杉 俊隆医師
杉ウイメンズクリニック不育症研究所院長の杉 俊隆医師

 流産には「不育症」と呼ばれる母体側の病気が原因で起きる流産と、赤ちゃん側の染色体異常による「自然淘汰」の2つがあります。流産は全妊娠の約15%の割合で起きますが、その80%は赤ちゃん側の染色体異常による自然淘汰です。まず、染色体異常によるものについてお話しします。

 女性は基本的に毎月1個の卵子を排卵しますが、排卵した卵子の25%に染色体異常があると言われます。年齢が上がるにつれて卵子も老化するため、染色体異常率は年齢と共に上がります。

 一方、男子の精子は約80日かけて新しく作られ、億単位で射精されます。精子も約1割に染色体異常がありますが、過酷な競争に勝ち抜けるのは卵子に一番乗りした一番元気な精子なので、精子の染色体異常はほとんど影響しないと考えられます。つまり、卵子の染色体異常が、胎芽・胎児の染色体異常に直結します。