社会に意見を反映させるには?身近なところから始めて

 取材中、隣に居合わせたフィンランド人の男性が、「今日の話、すべて安倍首相に聞かせたい!」と話していました。たしかにその通り・・・。冒頭でエイヤさんが指摘した通り、国への働きかけなしには、幸せな共働き社会は実現できそうにありません。ただ、私たち自身が身近にできることはないのでしょうか? すると三砂さんから、「まずは地域単位からアクションを起こして」という提案がありました。

三砂 エイヤさんから、もっと政治的に働きかけていくべきだというお話がありましたが、日本人は家庭内に不満を閉じ込めて、政治的になることが苦手かもしれません。フィンランドが世界2位の母親指標で日本が32位なのも、女性議員の割合が低いことが原因なんですよね。そこにも日本の課題が現れていると思います。

 ただ、フィンランドの人口が550万人であるのに比べて日本は人口規模が異なるわけですから、日本の皆さんは、まずは県や区といった地域単位で自分の意見を反映させていくことからやってみたらいいと思います。

 例えば今日、会場の女性が、自分が出産のときに十分な助けがなく大変辛い経験をしたと体験を語ってくださいましたね。それであれば、次に続く女性が同じような思いをしないために、社会にどういうケアが必要なのか、声を上げて、仕組みを変えていくように行動したらいいと思います。それが政治的になる、公的な態度をとる、ということです。最近は、地域でいろいろな活動を始めた女性の活躍を耳にするようになりました。そういう動きがどんどん活発化するといいですね。


会場では多くの参加者がゲストの話に耳を傾けた

フィンランド母も、矛盾を抱えて葛藤

 日本よりも育児環境が恵まれているフィンランドですが、エイヤさんによれば、フィンランドの女性にも悩みがあります。それが、「理想の母親像」との向き合い方。

エイヤ 今、フィンランドの母親たちは、「理想の母親像」と現実との間で葛藤しています。たしかに男性も育児に参加しますが、それでも『母が第一に育児に責任を持つべきだ』という価値観は社会に根強いのです。そのため、一見、何の問題もなく仕事と子育てを両立させている母親でも、内面では矛盾を抱えて葛藤しています。「私はもっと子育てに時間をかけなくて良いのだろうか」、「理想の母親像と今の自分はかけ離れているのではないか」と悩むのです。

 また、『子どもは神聖なもの』というイメージがあるために、実は親子の関係がうまくいっていないのだけれどそれを誰にも相談できない、といった問題も起こります。フィンランドの母親像は、以前よりもずっと多様化していて、母になることは女性にとってあくまで「選択肢」の一つですし、シングルマザーも2割近くいます。そんな状況にあって、昔ながらの「理想の母親像」とどう向き合っていけばいいのか、考えなければなりません。