日本は男性が外で長時間働き、女性が家事や育児に従事するという役割分担モデルによって発展を遂げました。フィンランドが共働き社会を意図的に作ってきたこととは対照的です。ただ、ここへきて、高齢者の増加、労働人口減少という共通の課題に直面しています。それをどう解決するかというときに、フィンランドでも日本でも、企業が無関心でいるべきではないと私は思います。育児や介護というのは、社会全体の問題です。企業はこれを傍観するのではなく、問題解決に取り組んでいくべきです。

日本の長時間労働は、女性も男性も苦しめている

 続いて三砂ちづるさんは、「日本は今、なぜ男女ともに生きづらいのか」について話しました。


三砂ちづるさん

三砂ちづるさん(以下、敬称略) 日本の女性は、昔に比べて高度な教育を受けられるようになったにもかかわらず、あまり幸せになっていません。女性はなぜか家でずっと忙しいですよね。家電製品の進化により家事は昔より楽になっているはずなのに、「私だけが忙しい」と不満を抱えている。「北欧の男性はもっと家事をやっているわよ」と、フィンランドの男性は日本人女性には憧れの存在です。

 日本人は、「家庭」や「夫婦」という私的な領域でのルールの作り方について途方に暮れている部分があるようです。例えば会社の中にあるような「業績主義」を家庭内にも持ち込んでしまっている。業績主義は、その人の業績、能力によってのみ評価されるので、家の中でも夫と競争することになります。「私の方がたくさん家事をやっている、あなたはやっていない」と。これが家の中が楽しくない一つの原因でないかと思っています。

 とはいえ、「あまり男性をいじめてはいけない」とも私は思うのです。日本人男性は、長年にわたって長時間労働にさらされ続けています。絶え間ない長時間労働によって健康上のリスクも高まります。女性の辛さも、男性の辛さも、日本の長時間労働を変えない限り、解決しません。

日本男性の育休取得率の低さは、企業の課題

 田中俊之さんは日本の男性の育休取得率の低さを例に挙げ、企業の社会的責任について話しました。


田中俊之さん

田中俊之さん(以下、敬称略) 現在、日本の男性は2%しか育児休業を取得していません。2%では完全に「変わり者」の世界ですよね。2%を10%に引き上げるのは個人の努力や意識では解決しようがなく、企業が取り組んでいくべき問題です。「CSR(企業の社会的責任)」という概念があります。社会というのは家庭や地域や、職場や、いろいろなものから構成されていて、「企業」もその構成要素の一つ。社会の一員として、企業が責任を持ってこの問題に取り組むべきなのです。