Oさん 「合格したときに『ゴールだ』と思ったんです。『これからはリラックスした私立中人生を満喫してほしい』と思ったら、入ってからも勉強が忙しかった(笑)。やはり、できる子の中に入るから、頑張らないと置いていかれるんです。結局塾に通い始めたのですが、先生と相談し、苦手な2教科だけを受けることにしています。『中学合格がゴール』なんてことは全然ないなぁ、というのが正直な感想です」

Mさん 「へぇ。そうなんですねー」

Wさん 「うーん。費用対効果の面が疑問だな。中学受験のときから大学までずっとお金をかけて、その結果の先に、いまの僕達がいる世界があるとすると、受験を経験した人、経験しなかった人が、さほど変わらない。それだったら大学に入って何かやりたくなったとき、その塾通いのお金を一年間留学する費用に充てられるんじゃないかと思ってしまう」

Mさん 「塾に行かなくてはならないほど、中学校の授業の進行が速いんですか?」

Oさん 「中高一貫の私立は5年間で6年分を教え、残りの1年で本格的な受験対策を行うそうですから、進行は速いです。頭のいい子は実際勉強もしています。中学の合格発表を見に行った日に、校門で中学生向けの塾の人達が待ち構えている。受験が終わった、という気分の日に『今日から6年間の戦いがスタートします』とあおられるわけですよ。あの光景は印象に残っています」

Wさん 「僕は高校の夏まで部活、秋の文化祭まで学校生活をエンジョイ、浪人してからどうにかする、という感じだったから、想像がつかないなぁ」

Oさん 「私も田舎でそういう伸び伸びした学生生活を送ったもので、今、娘が送っている生活に違和感を感じないわけではないですね」

Wさん 「僕の部下に東大卒がいます。確かに頭はいいんですけど、大したことはないです。今私は40代に入ったばかりですが、ここまでくると出身大学はあまり関係ない。僕は金融業界にいるのでこういう発想をしてしまうのですが、例えば受験にかけたお金と、大学を出てからの所得をてんびんにかけると、ものすごいお金をかけたとしても所得は高くならない、むしろマイナスであって、それなら何のためにそこまでやるのか、と思いますね

Oさん 「超難関の中高一貫校出身のSさんはどうですか?」

Sさん親の多くは、子どもがこの学校に入ったらすごい人になる、と思ってたんだと思います。でも、実際社会に出た同級生を見ても、そんなことないんじゃない?と思う。そりゃ、すごい人はいますけど、全体の何割かだけ。どこの学校に行っても最終の着地点は変わらないのではないかと思いますね」

勉強漬けの生活に、子どもは息切れするのではないか?

Mさん 「僕は高3の半年しか塾に通っていないので、自分から娘に塾を薦める気はさらさらないのですが、小学生から塾通いを始めたとして、大学受験までのざっと9年間の塾生活に子どもは耐えられるのか、というのが素朴な疑問です。Oさんの娘さんは受験当時はどんな感じで通っていたんですか?」

Oさん 「小6のときは、17時に学校から帰ったらすぐ塾に行き、22時とか22時半の帰宅。夏は一週間の合宿です。正直『潰れるんじゃないの?』と思った。オレだったら絶対潰れてます(笑)。でも、塾の話では、重圧で潰れる子と、楽しいと思う子がいるようで、うちの子は後者だった。『合宿行かなくてもいいぜ』と言っても『行きたい』というし、塾から、日曜日の特別コースを『娘さんが狙っている学校と同じ方向にこの御三家がありますから』なんて薦められ、一人で都心の塾まで通ってましたからね」

Sさん 「ああ、僕もOさんの娘さんと入り口は同じでした。小3のときに親に『中学校、見てみようよ』と連れていかれ『いいよね?』『いいなぁ』『じゃあ、やろうか』と(笑)。小3、小4のうちはゲーム感覚で楽しいんですよ。でも、後で振り返ると全部、親の敷いたレールに乗っかってたんだな、と思う。だんだん毎週のテストが増えてきて、偏差値やら何やらで最後の小学6年の1年間はきつかったです」

―― Sさんは、塾はどの程度通われてたんですか?