小さな子どもがいたずらするのはその子が悪いんじゃなくて手が悪い

────みどり保育園では、園児たちに対してどのようにダメの線引きをしていたのですか?

 大事なお子さんをお預かりしている私たちは、子どもの命を守ることが第一条件です。だから、ケガや病気に関わる危険なことは絶対にダメ。子ども自身にも、自分の身は自分で守らなくてはいけないと教える必要もありますよね。

 みどり保育園ではガスストーブを使っていたのだけれど、ガス栓は危険だから絶対に触れてはいけない。夏でもストーブのガス栓のそばには近づかないよう覚えさせました。

────まだ言葉で説明しても分からないような小さな子どもに、どうやって教えたのですか?

 「おててピン!」という教え方をしていました。これは効果絶大でしたよ。

────どういう教え方なんです?

 子どもがいたずらしたとき、悪いのはその子じゃなくて、いたずらをした手、かみついたら口が悪いんです。だからいたずらをしたら手を注意する。

 「め!」「こら!」「これ、いけません!」と怖い顔をして、「おててピン!」と声に出して、子どもの悪い手をなでるんです。

────怖い顔をして、手をなでるのですか?

 そう。力は入れません。でも声は厳しく「ピン!」と叱ります。すると、子どもは「うえーん、痛いよぅ!」と泣くんです。痛いはずはないのに。

 そのうちに、実際に手に触れなくても、「ピンよ!」の響きを聞いただけで泣くようにもなる。でも、ここでの“泣く”は本気では泣いていない、子どもの演技のようなもの。先生から「め!」「おててピン!」されて、「うぇーん」と泣くふりをする。今にして思えばごっご遊びみたいになっていました。

 「ダメ」を教えるにも、そんな遊びの余裕があると楽しいですよね。

 2歳、3歳の子は、自分の伝えたいことがうまく言葉にできないから、つい手が出てしまう。してはいけないことだと教えるのに、1回の「ピン!」では分からないことも多いけれど、繰り返していると、「ああ、いけないんだな」と分かっていきます。