母として、起業家として挑戦を続ける日月(たちもり)(福井)真紀子さんのインタビューの後編です。日月さんは2007年に株式会社ハーモニーレジデンスを設立。さらに8月から女性管理職人材探しを可能にする「KigenW」を立ち上げました。なぜそのような事業を立ち上げたのか、また、どうしたら日本では女性の力がもっと生かされるようになるのか、お話を伺いました。
アメリカと日本での、子育てをしながら必死で働いた日々を紹介した前編「シッター15人と連携 米国で壁を乗り越え、働いた」もお読みください。

「管理職に就くママをもっとつくりたい」と起業を決意

日経DUAL編集部 日月さんは現在、女性管理職候補者やシングルマザーの転職支援を行っています。なぜこのような事業を始めたのですか?

日月(福井)真紀子さん(以下、敬称略) 私は10歳のころ、すごくショックな経験をしたんです。「将来何になりたいか」という作文で、私は「お医者さんになりたいし、私のお母さんのようにもなりたい」と書きました。すると周りの大人が口々に「真紀子ちゃん、それは日本では無理なことなんだよ」と言ったのです。

 私は3歳から8歳まで家族の転勤でニューヨークで暮らしていて、アメリカのワーキングマザー達の姿を当たり前の光景と思って育ちました。ところが日本では、職業を追求することと母になること、どちらかを選ばなければならないんだと思い知らされたのです。すごくショックでした。「じゃあ、何のために一生懸命勉強するの?」と思いました。これがハーモニーレジデンス設立につながる原体験です。

 私自身は、男女雇用機会均等法施行の数年後に大学を卒業し、総合職として証券会社に入社しました。法律も変わったのだから少しは状況がよくなっただろうと信じて入社したのに、実際はやっぱり男社会。男性は専業主婦と結婚してどんどん出世していくのに、女性は結婚したらキャリアから外れなきゃいけないという状況でした。

 現在も、上場企業の女性役員にはママは非常に少ないですよね。「子どもも仕事も」という両立は一般的にまだまだ実現していません。どうしたらいいのかと考えたときに、私は、みんなのお手本になるキャリアママのロールモデルを増やさなければと思ったんです。

 ハーモニーレジデンスでは、子育てしながら仕事も頑張りたいという意欲のある女性を企業に紹介しています。いわば両立のロールモデル人材です。会社でそういう先輩の活躍を見るようになれば、次の世代の人も「両立できそう」と思うようになるはずです。さらにここ数年は、若い方の意識も変わってきていて、女性に限らず男性も、両立を望んでいる人は多いと感じています。