木の部屋に認められる癒し効果と集中力の維持効果

今回の研究結果は第11回日本疲労学会総会で発表された
今回の研究結果は第11回日本疲労学会総会で発表された

 実験の結果、木の部屋には2つの効果があることがわかったという。

「一つは疲労を回復させる癒し効果です。疲労感には明確な差がなかったものの、木の部屋で課題をこなした後だけ副交感神経の活動が上昇しており、疲労回復効果が高いことを示唆しています。もう一つは認知機能を維持する効果です。木の部屋では注意力の低下が抑えられる効果が認められ、これは脳の前頭前野の活性が維持されるためと考えられます」と植山さん。

 つまり木の部屋は白い部屋に比べて、作業をするときに集中力が落ちにくく、疲れても癒し効果で回復が早いことが期待できるということだ。その効果が木の香りによるものなのか、見た目によるものなのか、実験データからはそこまでは読み取れない。ただ、おそらく木から受ける視覚的・触覚的な印象が複合的に作用しているのだろうと、河崎さんは分析してくれた。

バランスのよい木質内装の比率は部屋全体の4~6割

 実験で使われた部屋を実際に見てみると、木の部屋に比べて白い部屋は明るい印象が強い。照明はまったく同じなのだが、白い部屋は光が拡散して明るく感じられるのだ。また部屋の中の机に座ってみると、木の部屋は机や床など木の感覚が感じられ、かすかだが香りもわかる。木の部屋のほうが“落ち着く”のは確かなようだ。

使われている照明は全く同じなのに、左の木の部屋に比べて、右の白い部屋は明るい印象が強い
使われている照明は全く同じなのに、左の木の部屋に比べて、右の白い部屋は明るい印象が強い

 木に癒し効果が期待できることが実証されたわけだが、実際に内装に木を使う際には注意すべき点もあると、河崎さんは指摘する。

「内装を全面的に木質にしてしまうと、インテリアとして重い印象になってしまいます。部屋全体の4~6割程度にするとバランスがいいでしょう。また本物の無垢の木材は経年変化や乾燥による縮みなどがあるので、メンテナンスに少し手間がかかります。代わりの素材として反りや縮みの少ない集成材や『挽き板』などがあり、これらを利用すれば無垢材とほぼ変わらない効果が得られるでしょう」