本格的な受験を目指してスタートを切っている人はもちろん、わが子がもしも「男子中に行きたい」と言い出したときのために予備情報を仕入れておきたい。そんな保護者にとっても役立つイベント「東京私立男子中学校フェスタ2015」のリポート第2弾は、注目のパネルディスカッション。まずは、満員の会場で熱気に包まれた「男子御三家校長によるパネルディスカッション」からお届けしよう。

 麻布、開成、武蔵中。それぞれ超難関校の「男子御三家校長」のパネルディスカッションでは、麻布中学校の平秀明校長、開成中学校の柳沢幸雄校長、武蔵中学校の梶取弘昌校長が登壇。男子中フェスタ実行委員長である本郷中学校の北原福二校長による司会進行によって進行された1時間には、「男子教育」について、また、親は子どもの成長をどう見守れば良いか、といった濃い話が詰まっていた。

毎年人気のパネルディスカッション。ホールは満席。みんな、真剣に聞き入る
毎年人気のパネルディスカッション。ホールは満席。みんな、真剣に聞き入る

御三家校長が語る、男子校教育のメリットとは?

 まず、男子校で学校教育を受けるメリットはどんなところにあるのか。

麻布 入学時、子どもは劣等感を感じても6年間で多様性を認められるように

 麻布・平校長は、「今は共学化が進み、日本全国に数千の中学校があるが、男子校は国公立と私立を合わせても100校に満たないくらい特殊な存在となっている。一般に、女子は語学が得意で、真面目にこつこつと勉強する。男子は空間認識系が得意で、勉強でも興味を抱くものを見つけるとぐっと成長する。

 入学時に周囲を見渡し、生徒はそれぞれに劣等感を抱くが、6年間ともに過ごすことによって『あいつはゲームに関してはすごい』、『文章がすごい』と、それぞれが一目置き合う存在となり、多様性を認められるようになる。多感な人生の土台作りをする中学、高校生の時期に人間性を磨くのは人間でしかないと実感する」と語る。

開成 「面倒見が悪い」という噂もあるが、生徒の状況に応じて手を差し伸べる
 

 一方、開成・柳沢校長は、「今はインターネットからあらゆる知識を得ることができ、学校という場所に生徒を集めて教育をする、という意味合いは今後変わっていくのかもしれない。しかし、中1から高3まで6年間を通してミニ社会が形成されるのはこの環境ならでは。人とふれあい、距離をいかに保つか、といったことは生徒が1カ所に集まらないと学ぶことができない。女の子がいるとどうしても“恋敵”が生まれ、級友がライバルになる。そういうことがない環境で、自己を作り上げることができる」という。

 柳沢校長によると、開成は「面倒見が悪い」という評判があるそうだ。しかし、中1の6月に学校生活についてのアンケートを実施し、『学校に通うのが楽しくない』『どちらかというと楽しくない』というほんの数名にはきめ細かく手を差し伸べているという。その他大多数の生徒に関しては「放っておいても学校生活を楽しめるからよい」というふうに、生徒を見守っている。

武蔵 保護者がだらしないと思うようなことも教師から見ると普通
 

 武蔵・梶取校長は、「中1という段階で見ると、男女の発達段階は全く異なる。お母さんがお子さんを見て『だらしない』と思うようなことも、我々から見るとごく普通。この時期の男子は、口ベタで不器用。たとえば掃除の時間にリュックを背負ったまま掃除をしたりするが、放っておく。わが校は開成と同様に“面倒見が悪い”ので有名な高校だが(笑)、居場所がないという子ども達には一人一人しっかり手をかけていく。生徒同士も、ぶつかり合いの中で人との関わりを学ぶことができる」と話す。