小学3年生で塾に通い始め、あれよあれよと始まる中学受験。だが、都心を中心に過熱するこの中学受験ムードに疑問を感じる人も少なくない。「もし中学受験をしないことにしたら、うちの子の将来はどうなっちゃうの?」「今の子どもには本当はどんな教育が必要なの?」――リクルートの敏腕営業担当を経て都内で義務教育初の民間人校長に就任し、斬新な取り組みで地域と連携した教育体制をつくりあげてきた教育改革実践家の藤原和博さんに日経DUALの羽生編集長が疑問をぶつけてみた。インタビュー後編は「藤原和博「私立に行けばいい教育がという誤解」

中学受験に違和感を感じるあなたへ

羽生編集長 共働きで親として子どもと接する時間が限られていたとしても、本当に将来に役立つ教育を与えてあげたい。日経DUALの読者の皆さんと接していて、そんな思いが強く伝わってきます。その中で、キーワードによく挙がるのが「中学受験をするかしないか」です。

 私自身も小3と小1の子どもがいますが、小学校に入って早々に受験情報が飛び交う現実に、正直、あぜんとしています。「公立が当たり前」という田舎のカルチャーでのびのびと育った私にとっては、違和感ありまくりでして…。中学受験を乗り越えた先に期待できる教育の可能性も気になる一方で、「中学受験を“しない”という合理性もあるんじゃないか?」という疑問が消えずに悶々としています。そこで、産業界と教育界の双方に精通する教育改革実践家の藤原和博さんに聞くしかない!!と押しかけてきました(笑)。

教育改革実践家・藤原和博さん
教育改革実践家・藤原和博さん

【主な内容】
●日本の教育は大きなターニングポイントを迎えている
●20世紀は「みんな一緒」志向の成長社会、21世紀は「それぞれ一人ひとり」が生きる成熟社会
●「頭の回転の速さ」から「頭の柔らかさ」が問われる世界へ
●正解のない社会で生き抜く力 = 情報編集力
●10歳まで思い切り遊ぶことで情報編集力が身につく
●時給格差があるニッポンでこれからの子どもに必要なのは希少性

藤原和博さん(以下、敬称略) 中学受験、すごいですよねぇ。地域差もありますが、東京23区と一部の市内では、異常といっていいほどのブームが続いていますね。夫婦共に地方出身者で公立コースで育ってきた場合は「中学受験なんて必要なの?」と思うものだけど、周りの過熱ぶりに巻き込まれてとりあえず塾に申し込み、そのまま受験へ突入しちゃうというケースは本当によくありますね。

―― そうなんです。そもそも、受験をさせるかさせないかという選択の前提になるのが、「子どもが将来幸せになるための教育は何か」という親心ですよね。「自分の力で幸せにおなりなさい」と冷静に思う一方、できるだけのことはしてあげたいと思う母心です。藤原さんがお考えになる、これからの子どもたちに必要な教育について教えてください。