10歳までの遊びが情報編集力を鍛える

藤原 情報編集力を鍛えるために僕が大事だと思うのは、10歳くらいまではとにかくとことん「遊ぶ」こと。しかも、できるだけ不自由な環境がいい。

 遊びの中で起きることって、納得解を作り出す作業の連続なんですよ。例えば、何もない広場で道具もない状況で野球やろうぜっていう時に、ホームベースはどうするかとか、バットになる木の枝探すようなところから始めるでしょ。あるいは、ままごと遊びだったら、小石や葉っぱをいろんな食べ物に見立てて、その世界を作り出しますよね。この「見立てる」っていう力が非常に大事で、要は「どんな状況でも何とかする」という力につながるわけですよ。

―― 子ども時代、何にもない原っぱで遊ぶのが楽しくて、日が暮れるまで駆け回っていました。

藤原 そういう原体験があると、社会を生き抜く力につながるんですよ。ところが、最近は具合が悪いことが起きていて、子どもたちの野球チームはどんなに弱小でもユニフォームから何からすべて道具が揃っているし、ままごとに至っては「ままごとセット」が売られているでしょ。これでは見立てる力が育ちにくい。かつ、最近は子どもたちが自由に遊びにくくなっている。放課後の遊びの約束も親同士のアポが必須になっていますからね。

―― 実は、今朝も息子の同級生のお母さんから「今後は遊びのお約束を事前にしましょうね」ってメッセージをいただいたところです(汗)。息子が友達を遊びに誘おうと突然訪問してしまったらしいのですが、その男の子はサッカーに行っていて不在だったと。「とても残念そうに帰る姿が可哀想だったので、今度からは事前に調整を」というお母様からのご提案でした。

 その気持ちもわからなくないのですが、「残念な思いを味わった方が子どもを育てる」という考え方もあるのではないのかな、と。何度か訪問する度に残念な思いをしたら、本人も「そうか、水曜日に行っても遊べないから、他の日に行こう」って学ぶでしょうし。すべてをスムーズに準備するのではなく、「うまくいかない経験」をさせるのも教育なのかなって思います。

100倍の時給格差 子どもを「稼ぐ人」にするには?

藤原 そう思いますよ。子ども同士のコミュニケーションのあり方も、「みんな一緒」から「一人ひとり違っていい」へシフトしていくべきです。これには根拠があって、稼ぐ力の本質についてのある数字を紹介しましょう。

 日本のサラリーマンの平均時給は平社員から部長クラスまでだいたい2000~5000円の幅なんです。また、ファストフード店のアルバイトだと800円くらいですよね。一方ではるかに高い時給をもらっているのが、家を一軒建てられる大工さんやランドスケープができる庭師で1万円くらい。人気の弁護士だと3万円くらい。最も高いレベルになると、マッキンゼーのシニアコンサルタントなんかは8万円くらい課金します。つまり、ニッポンの時給というのは、800円から8万円まで100倍の開きがある。

 この100倍の差を決定するのは何か? 経験? 技術? 

 いや、一言でいうと「ユニークネス」です。つまり、希少性。

 子ども達に向けた授業では「レアカード」っていうと一発で意味を分かってくれますけどね。つまり、「その人にしかない価値」を磨けるか。そのためには、横並びの教育はナンセンス。希少価値を育てる教育が重要なんです。

<インタビュー後編「藤原和博「私立に行けばいい教育がという誤解」へ続く>

(ライター/宮本恵理子、撮影/洞澤佐智子)