こんにちは。女性活用ジャーナリスト・研究者の中野円佳です。昨年9月に『「育休世代」のジレンマ』という本を出版しました。「育休世代」というのは、2000年代に入り、大企業の新卒採用に占める総合職女性の割合がかなり増えてきてから入社した世代のこと。本の中では、育休や時短などの制度がある程度整ったがゆえに、それらを享受することと第一線で働き活躍することが両立せずに女性達がモヤモヤしてしまう現状を描いています。
 本では主に「20代で出産した子育て中の育休世代女性」にスポットを当てましたが、この連載ではその周辺にいる人達に幅広くスポットを当て、彼らが抱えるジレンマを匿名の座談会形式でヒアリング、分析していきます。今回のテーマは「イクメン世代のジレンマ」。育休世代の夫の方々にお集まりいただき、「上」「中」「下」の3本立てでお送りします。

【座談会参加者プロフィール】
Eさん 31歳、私立大・大学院(教育)卒。ベンチャー企業→フリー。子どもは5歳と0歳。妻は第二子出産を機に退職し、今後の道を模索中。
Fさん 33歳、国立大(経済)卒。商社勤務。子どもは2歳。妻も同じ会社の同期。留学中、滞在期間の半分は妻が育休を取って同行、残り半分は単身赴任。
Gさん 38歳、国立大・大学院(工)卒。日系メーカー→第一子が生まれてから外資系の通信関係企業。子どもは5歳と2歳。妻も外資で営業に近い仕事。
Hさん 33歳、国立大(工)卒。日系メーカー勤務。子会社へ出向中、第二子出産に合わせて7カ月の育休を取得。育休から復帰後、本社に戻る。子どもは4歳と1歳。
Iさん 34歳、国立大(農)卒。広告代理店。子どもは小学2年生と3歳。妻はマスコミ関係フルタイム。

育児は仕事より大変! 偏る負担、たまる妻のストレス

中野円佳さん(以下、敬称略) 最初に、夫婦の家事・育児分担を教えてください。

Eさん(以下、敬称略) 長男が生まれて最初の2年くらいは妻が9:1くらいでやっていました。子どもが2歳くらいのとき、僕が体調を崩して家にいたので5:5くらいに。こんなに大変なんだと思いました。家事スキルが無いせいもあるのですが、仕事と全然違う大変さで。

 会社勤めしていたときは保育園への送りは担当でしたが、それ以外はほとんど妻頼み。土日だけ遊ぶ係みたいになっていて、土曜の午前中からぎこちない遊びが始まり、日曜にやっと子どもと仲良くなるとまた僕がいなくなる……の繰り返しでしたね。

 この家事スキルじゃとても2人目は無理、と言われていたのですが、フリーになって基盤も整ってきたので、2人目に踏み切りました。独立してからは融通が利くので、こちらが迎えに行くこともできています。でもフリーで活動しているので、育児をすればその分、売り上げが下がるなど事業を回すうえでは課題もあります

Fさん(以下、敬称略) 留学中、最初の1年は子どもと一緒にいたのですが、結構勉強が忙しくて夜中までやっていたりしたので、妻はストレスをためていたと思います。残り1年の単身赴任期間はむしろ独身に戻ったという感じで。最近帰国して、ようやく妻との分担が始まったところです。

Gさん(以下、敬称略) 平日朝起きて、子どもの準備と保育園に送っていくまでが私の仕事です。うちの会社は朝早い必要がなく、10時くらいに出社すればいいので。帰ってきてから洗濯もしますね。妻は朝のうちに晩ごはんの準備をしていて、お迎えから夜を全部担当してくれています。

 僕の仕事が早く終わることがあっても、「帰ってこないで」って言われるんですよ。普段子どもが21時半くらいにベッドに入って22時ごろに寝るので、僕が21時とかに帰ってきて子どものテンションが上がると寝なくなり、妻の機嫌が悪くなる。

 そうかと思うと、たまに飲みにいったときに子どもがひどくぐずってたりすると「何で飲みにいってるの」と怒られる。どっちなんだよ、と。土日に時々、妻1人の時間をつくるために子ども2人を見てると、確かに大変だからストレスもたまるよな、とは思うのですが。

Hさん(以下、敬称略) 妻は専業主婦ですが、2人目が生まれたとき、私も育休を7カ月取りました。復職後、私は窓際に追いやられて、自ら社内で仕事を探し、偶然立ち上がったプロジェクトの設計に入りましたが、「睡眠時間削って仕事をやれ」と言われ、体調を崩して1週間入院したりしました。妻としては私が7カ月家にいたときと、元の仕事以上に忙しくなっている今とのギャップがあまりにも大きくて、苦労しているようです。

 ただ自分の疲労度的には、育休中に7カ月間完全に上の子の育児を引き受けたときのほうがはるかに大変でした。今は朝ごはんは自分が子どもの分も用意して、幼稚園まで送り、洗濯するのが役割です。

――比較的家事・育児を担っていると思われる男性達でも、多くは「朝担当」。負担が大きい夕方のお迎え~夜は妻が担当する場合が多く、やはり比率で見ると妻の負担が大きそうです。妻からの不満に対しては理不尽に思う面もありつつも、「育児のほうが仕事より大変」「妻がストレスをためるのも分かる」と、頭では理解してくれているもよう。また、2人お子さんがいらっしゃって現在は育児をかなり担っている男性でも、1人目のときはだいぶ価値観も実態も異なったというのが印象的でした。