家計負担は夫のほうが重たい印象

中野 ちなみに家計分担はどのように?

I 家計口座に各自のこづかいの額だけ抜いて、それ以外は全部入れます。家回りの費用はそこにひも付いたカードで落とす。主に妻が使って僕が明細を受け取るような形です。

H うちは妻は働いていませんが、共通の口座、クレジットカードがあります。

G お互い年収を知らないのですが、家のローンは夫婦が2:1の比率です。妻が名義を持ちたいというので。光熱費とかはこちら持ちで、食費は買ったほうから落ちる。ほとんどこっちが払ってると思いますね。「なんでたまってないの」とか言われますけど、たまらないですよ。

E 家賃やら何やら僕が払い、生活費くれと言われ、随時払っています。

中野 全体的に夫の家計負担が重い気がしますね。比較優位のせい?

G 子どもが生まれるまではほとんど同じ年収だったんですよ。でも、2人子どもが生まれて、妻は産休・育休取って2~3年ブランクがあって、給料の差はたぶん開いているんですよね。妻にしてみれば、これだけ子ども育てた結果、給料が下がって、そっちは何もせず給与上がっていいよね、という感じです。

 差がついているので、家庭を回していくうえでは、どっちが働いたほうがいいかという話になると、確かに夫側になってしまう。もしブランクがあっても給与水準が下げられてなければ、選択肢は変わってくるかもしれないと思います。生活水準を落とすという決断はなかなかできないので。

 男性も育休を取らないといけないとか、取った人の処遇を落とさないということは大事かと。やっぱり育休明けって内部的な仕事に行ってしまうじゃないですか。希望したのか、行かせられたのかは分からないですが、そういう事例を見ていると育休は取れないなと思いますよね。

――夫婦それぞれの意識の問題もあるとは思います。生計維持意識の差は、子育て負担の偏りと、どちらかというと妻のほうが「降りる」ことに確実につながっていると思います。でも、その子育て負担の差が、企業における女性の処遇を下げることで、妻側がやりがいを感じられない仕事にモヤモヤを抱いたり、ますます家計分担に差が生じたりして、さらなる子育て負担の偏りにつながっています。

 ここでは完全に企業・夫・妻の三者の間の悪循環が起こっていると思います。同志社大学の川口章教授は、企業において女性が不利に置かれる状況が、夫婦間の役割分担を合理的にし、社会的全体としては決して合理的とは言えない状況をつくり出していると指摘しています。 

 最後に出てきたように、やはり男女共に、育児をメインで担う人が不利益を被る仕組みを是正することは男性にとっても女性にとっても必要だと思います。続く「中」では、この夫婦で陥っている状況が職場による問題なのか、意識による問題なのか、もう少し掘り下げていきたいと思います。 

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(写真/鈴木愛子)