プラスにならないことはやらない。やらなくても誰も文句は言わない

 アメリカ人は合理主義です。何をするにもプラスとマイナスを考え、結果が自分にプラスになることを選びます。

 プラスマイナスというのは金銭だけに限りません。自分に金銭的な利益が出ないボランティアだって、子どもの喜ぶ顔を見ることや、はたまた役員を全うすることで人から感謝されたり尊敬されることで得られる、いわゆる達成感(プラス)が、労力や時間という投資(マイナス)を上回らなければ、やってもうれしいことはない、だからやらない。そして、やらなくても誰も文句を言わない。そんな感じです。

 過剰な責任など、PTO役員には求められていません。だって、あまりにもやることが多くて大変なら、誰もやる人はいないし、そこを強制的にやらせたりしたら、絶対に苦情が出ます。アメリカに20年以上暮らしている私もまだ日本人気質が抜けずやりたくないクラス・ペアレントを押しつけられましたが、もしあのとき、やりたくないアメリカ人が声を掛けられたら、きっと落ち着いて断っていたでしょう。日本人にとって「黙って、耐えて、責任を果たす」は美徳ですが、アメリカ人にとってはありえないことですから。焦るところが日本人、笑顔でいとも簡単に断るのがアメリカ人(笑)。

 アメリカのPTOは、やりたい人がやる。時間がなかったり、単にやりたくない保護者は別にやらなくても文句は出ません。

 ちなみに私のまわりではクラス・ペアレントのなり手が一人もいなかったという話は聞いたことがありません。楽だし、自分にとってプラスとなると考える誰かが引き受けているんでしょうね。そして米国でも男性より女性、そしてやはり専業主婦が多い気がします。パーティの準備は、女性のほうがテキパキしますからね(笑)。

 半ば強引に押しつけられたクラス・ペアレントですが、1年経った後は、やって楽しかった、良かった、面白かった! という気持ちになれました。先生や生徒の親に顔を覚えてもらえたのもプラスでした。最初はもちろん、肩にのしかかった重圧が恐ろしく、PTO会長をかなり恨みましたけど。でも、本当に楽だということを彼女も知っていたからこそ、経験ゼロの私にさえ、なんの躊躇もなく役員を押し付けることができたんでしょう(笑)。

──ってことで、次の年も、気が付いたらクラス・ペアレントやってました。

お楽しみ会では子ども達のコスプレも楽しみました
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