「未経験でもノープロブレム」は嘘じゃなかった

 そんな感じで、クローニン真木は、生まれて初めてのPTOのミーティングにて、いきなり「クラス・ペアレント」、すなわち娘のクラスの保護者リーダーという、役員に抜擢されてしまったのでした。……うそぉ(涙)。

 呆然としたまま自宅に帰り、恐る恐る渡された書類に目を通すクローニン真木。役割の内容も知らずに、されてしまったクラス・ペアレント……。これから1年、地獄だわ(涙)。しかしそこに書かれていた役割責任とは、年に4回あるクラスのお楽しみ会の企画/開催……だけ。

 あれ?

 日本のPTAってもっと忙しくなかったっけ? 聞いたところによると、運動会といった行事のお手伝いやら、保護者会の運営やら、学校敷地内の清掃やら草刈りやら、登下校時に子どもの安全を守るためのパトロールやら、なんかいろいろあるらしいじゃないですか。そんなのが全くない。

 それに、日本のPTAは、何かクラスで揉め事があったときも、保護者と学校の間に立って動くこともあるということですから、PTAの役員は学校という組織のなかで、マネジメント能力や、トラブルシューテンィグ能力も必要とされる、重い責任の役割ともいえます。

 けれども、アメリカのPTOにはそんなことは求められていないのでした。いじめなどの問題があった場合は、当事者(いじめの加害者、被害者、そしてそれぞれの親)と学校での直接のやり取りで解決を図ります。もちろん、いじめ行為が脅迫や傷害行為だった場合は、校内での問題といえども警察や弁護士が介入して刑事裁判、民事裁判に持ち込まれることだってあります。でも、PTOの仕事ではありません。

 お楽しみ会かぁ……。それだけなら、なんとかできるかも。

 とりあえず、手渡された書類には保護者のメールアドレスのリストが添付されていました。「挨拶がてら、最初のお楽しみ会で手伝ってくれるボランティアをメールで募れ」との会長からの指令文もあります。そこでメールを作り、リストに載っている人達へ送りました。もちろん、自分の紹介文には「クラス・ペアレント、やったことありません。右も左もわかりません。本当にサポートが必要なので、どうか助けてください」と、泣きを入れましたとも(笑)。

 そうしたら、なんともたくさんの親御さんからの返事が。しかも、既にクラス・ペアレント経験のある方も何人もいて、お楽しみ会の計画も、運行も、それはもう慣れたもので、大変助かりました。

 でも、だったら、なんで経験豊富なあなた達が最初っからクラス・ペアレントにならないのよ?

──というツッコミを入れたいと思いつつも、それを言っては角が立ちます。とりあえず流れに任せよう、そうしよう。

 アメリカのお父さんお母さんは行動的です。お楽しみ会をやるにも、いろいろなアイデアを出し合ってくれたり、ゲーム用の玩具を手作りしてくれたり、当日は子どもを上手に引率してくれたおかげで、リーダーとして私がやったのはお楽しみ会用の会費集めだとか、それぐらい。うわあ、最初の心配とは裏腹に、蓋を開けたら、なんて楽ちんっ! 会長が「ノー・プロブレム!」って言ってたのは、嘘じゃなかったんだ(笑)。

写真がアメリカのPTAが行う大切な、そして唯一のミッション「お楽しみ会」です
写真がアメリカのPTAが行う大切な、そして唯一のミッション「お楽しみ会」です