連載「黒田優佳子先生の 優しい生殖医療講座」第3回です。不妊治療専門施設の黒田インターナショナル メディカル リプロダクション(東京都中央区)院長の黒田優佳子先生に、子どもに教えておかなければ、将来、自分の子どもや子どもの恋人を不妊にしてしまうかもしれない、大切な知識について伺いました。

セックスすると精液の中に混在する菌で、女性の子宮の中は侵される

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長の黒田優佳子先生
黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長の黒田優佳子先生

DUAL編集部 前回記事「子どもの性意識の初期設定こそ、親の大事な役割」では、わが子にどんなタイミングでどのような話をどうやってすることが性教育には大事か、という話を伺いました。今回は、さらに踏み込んで、子どもだけではなく、そして親自身も知っておくべき話題について伺いたいと思います。

 少し前の調査になりますが、セックスに関するアンケート調査「Durexセクシャルウェルビーイングサーベイ」(2006年8~9月)によると、日本人のセックス経験人数は男性が14人、女性が8人だったそうです。この実態をどのようにご覧になりますか?

黒田先生(以下、敬称略) 男性側がちゃんとコンドームを使用していたかどうかが気になります。というのも、多数の男性とコンドームを用いないでセックスをした場合、簡単に言うとその行為が原因で、将来的にその女性が妊娠しにくくなる可能性があるからです。

 精液は尿道から排出されます。射精する際、尿道に残っている尿と一緒に菌も精液の中に混入してきます。つまり、コンドームを使用しないセックスでは、この菌と尿が精液と一緒に女性の膣内に入っていきます。この菌は、普段であればそれほど悪者ではありません。でも、免疫が落ちていたらどうでしょう?

 元気な人の体内に風邪の菌やウイルスが入ると、白血球が攻撃して処理してくれます。でも体力が落ちて免疫力が下がっていると風邪を引きやすくなりますよね。子宮の中でも同じように白血球が体の外から入ってきた菌を攻撃してくれますが、免疫力が低下していたり、その菌に侵される回数が多かったりすれば菌のほうが勝ってしまうようになります。ここは個人差もありますが、例えばセックスする相手が5人になれば、×5どころか5乗くらい精液中に混在する複数の数多くの菌によって子宮の中は侵されることになります。