夫婦間も部下との関係でも「聞くこと」が大事

―― 素で付き合っている、という感じなのでしょうか?

佐々木 そうですね。親子だけでなく夫婦でもそうです。例えば、私も子ども達も、妻の初恋の男性のことを知っていますよ。私と妻がどういういきさつで結婚したかも家族は全部知っています。私も妻も話しますから。

 職場でも部下との面接があります。普通は年1回のところ、私は年2回していました。一人当たり2時間くらいかけるのですが、最初の1時間はプライベートについて聞く。「お父さん、お母さんはどうしている?」とか、未婚の女性ならボーイフレンドの話とか。私にとって自分の部下は家族みたいなもので、その家族のために何かしてあげられることはないかと思っていました。部下達にもその気持ちが伝わっているし、それに彼らが語ったことはどこにも漏れない。そんな信頼関係があるからこそ、いくらでも話してくれます。

 ただひたすら相手の話を聞けばいいんです。おうむ返しというのがあるじゃないですか。「私、昨日ね」と話し始めたら「昨日ね」と相づちを打つ。そうすれば相手も話しやすいでしょう? 単純だけど、これが結構使えるんですよ(笑)。とにかく相手の言うことを繰り返していると、相手が乗ってきます。「自分の話を聞いてくれる人だ」って分かるから。

 50歳を過ぎたころかな、かつての部下だった女性から年賀状が来てね、「あのころは佐々木課長との面談が待ち遠しくて、楽しくて、懐かしくて」と書いてあったんです。上司と部下や同僚がそういう関係を築けたなら、会社の仕事はうまくいきます。効率的になる。会社の仕事を効率化する両輪というのは、コミュニケーションと信頼関係だと、私は考えています。これさえあれば、大抵のことは克服できる。

家族は黙っていても分かり合える、は幻想

―― 仕事を効率的に進めるには、まず相手の言葉にじっくり耳を傾けることが大事。そしてそれは育児でも同じ、というわけですね。

佐々木 コミュニケーションと信頼関係は、会社の人間も家族も同じです。両方とも必要なのです。家族は一緒に暮らしているから黙っていても分かり合える、なんていうのは幻想。話をしなきゃ、分からない。子どもなりに悩んでいることだってあるでしょう。親の意見を押し付けるのではなく、意見や気持ちをしっかりと聞いてあげる。そうしながら、互いによりよい関係を模索していくことが、絆を深めるカギだと思います。

* 次回は自閉症のご長男の育児や、「人生の目的」について伺います。

(構成/Integra Software Services、撮影/蔵 真墨)