ある時期から子ども達との付き合い方を変えた

―― お子さんとはずっと会話の絶えない関係ですよね。親と子の関係から一人の人間と人間という向き合い方に、どのようにしてスタンスを変えるといいのでしょう?

佐々木 子どもというのはね、ある時期までは「教えるべき存在」なんですよね。子どもは大人のまねをしながら教えてもらったことを学んでいく。つまりそうした行為を通して、自分を大人にしていくわけですね。それで、ある時期から自立し始める。自分なりの意見を持ったり、大人の言うことは間違っているんじゃないかと考えたり、そういう時期は必ず来る。私は自分の経験もあり、大体それが高校2年生くらいじゃないかなと思います。

 だから子ども達がそれくらいの年齢になったとき、私の場合はまず息子や娘の考えを聞くことにしました。「このことについてどう思っているのか?」とかね。それで子ども達の意見に対し、一対一の立場で「佐々木常夫はこう考える」と伝える。

―― その時期が来るまでは教えるということですか? 「お父さんはこう思うから、あなたもこうしなさい」と。

佐々木 正しいことをきちんと教えるというのは、やっぱり大人の義務だと思います。ただし一定の年齢に達したら、押し付けるのではなく納得させなくてはならない。そのために相手の意見を聞き、その上でこちらの考えを伝える。相手の気持ちになって、相手の目線で受け止めてやる。子どもの考えを尊重するというのは、とても大事だと思います。

 そういうふうにしていたら子ども達は何でも話してくれるようになります。娘が初めて付き合った彼氏のことも知っていますよ。娘は成人してからも「お父さんと話すのは面白い」といってくれて、一緒によく食事に行きますよ。こうした関係を築けたのは、私が娘に対して「娘である前に一人の女性」として向き合い、アドバイスしてきたからだと思います。