キャリア時計は長い。目の前のプロセスを楽しむのが幸せのコツ

西田 実は10年以上前に、20代半ばの羽生さんにお会いしてるんです。仕事が大好きな人たちが集まっていた会社だから、本当に「24時間働いている」といったような。編集というのを非常に面白がって、お茶汲みもいとわずに、雑用でも何でも一生懸命やってらした。

羽生 懐かしいですね。お茶汲み、コピー、法人ゴミ出し、会社の玄関そうじ、4階建ての建物のフロア掃除機がけ。政治家などいろいろな大物が来る会社で、会議や来客時など30分ごとにお茶を持っていきます。その場をかいま見ては、一流の人の話の進め方ってこういうふうにするのだな~、「単刀直入」とはこのくらい覚悟がいることなのか~、ビジネスでも数字だけでなく文学が必要なのだな~など、若者なりに学ぶことが豊富にあった。ゴミ箱清掃も担当していて、ゴミ箱を見ると、その人の器というか仕事の仕方が分かったり。皆さん、会社のゴミ箱は気を付けたほうがいいですよ、出ますからね人柄が(笑)。そんなことが今、全部いきていると思います。「いつか役立つだろう」と思ってゴミ集めしていたわけではないですけど、目の前にあるものを面白がっていろいろ見聞きしていると、15年後くらいに、ふとそういえば……、と何かを思いついたりする。

 人生は長いですし、楽しまないのはもったいない。帝塚山学院大学の非常勤講師で教えている大学生たちによく話すのは、「年齢÷3=キャリア時計」だということ。21歳の彼女たちは7時だからまだ出社前。8時前くらいからようやく働き出す。30歳(10時)になると、中堅だ、昇進しなきゃって焦るけど、実はまだまだ朝の10時くらいでフレッシュな時間帯ですよ。36歳でようやく正午で、54歳の18時ではまだまだ帰れず残業! 20時の60歳で仕事を片付け、21〜22時くらいでようやく帰宅=退職です。こんなキャリア時計を考えても、目の前のことをひとつひとつ楽しまずに、目的達成だけを果実として過ごすなんて、人生もったいない。

 卑近な例ですが自分の場合ですと、10時に初産、正午に日経DUALという媒体の立ち上げを企画、今13時ちょっと前。ランチタイムが終わったくらいで午後もうひと活動したいな! といった感覚です。自分の歩む先を俯瞰しながら、目の前の小さなことも味わい楽しんでいくと、ママであり、女性であり、キャリアのど真ん中にいらっしゃるハードスケジュールな皆さんでも、前向きに過ごせると思います。

次ページからは、参加者が編集長に質問した対話を少しご紹介します。