日本財団ママプロ(ママの笑顔を増やすプロジェクト)と港区青山の複合文化施設「スパイラル」は協働で、今春4月より西田陽光さん企画による「女性のためのリベラルアーツ講座」を開講。出産や育児、仕事、介護などライフステージによって多様なライフスタイルを送る現代女性に向けた講座の前期第2回に日経DUAL羽生編集長が登壇しました。

 一般社団法人次世代社会研究機構代表理事・西田陽光さんの司会進行のもと、政治ジャーナリスト・細川珠生さんと繰り広げられた対談の模様をお伝えします。

会社でも、地域社会でも、「子どもはかわいい!」と堂々と宣言したい

西田さん(以下、敬称略) お二人とも、子育てをしながら、とても自分らしくお仕事をされています。育児でも、介護でも、「ながら」というのは本当に大変。細川さんは、子育てだけでも大変なのに、ややこしい政治家を相手に、フリーランスで活動なさっていますね。

細川さん(以下、敬称略) 私の若いころは出産すると会社を辞めるのが普通でしたから、一生仕事をするためには、最初からフリーでやろうと思っていました。父(政治評論家の故・細川隆一郎氏)からも「女性も自立をすることが大事だ」と、よく言われていましたから。母は専業主婦だったんですが、私が高校生くらいだったあるとき、「経済力のない女は惨めね」と言ったんです。母の暮らしを見ていて惨めとは思いませんでしたが、ものすごくインプットされて、女性も仕事をするのが私にとっては当然と思いました。

 ただ、私はフリーランスなので、仕事と家庭どちらに軸足があるかと言えば、小学校に上がるまでは子育てが中心。幼稚園に行っている間に仕事をし、帰ってきたら、子どもの相手をしていました。今も小学校に行っている間に仕事をし、夜のお付き合いはほとんどしていません。講演や会食など、夜に仕事がらみで出かけるのは多くて月に3回くらい。それは日本の社会では厳しいですが、「子育て中です」といえば、理解はしてもらえるようになってきています。私が出産したころよりも、いくらか世の中の理解は進んできたと思います。

羽生 子育ても仕事も、両方めいっぱいできるというのは、一番リッチだと思います。DUALの読者からは、どっちを軸足にするか、年単位、月単位どころか、1日とか30分単位くらいで悩み、揺れ動く声が伝わってきます。そのときに細川さんのように、専門性があると選べるというのが羨ましい、皆さんそこに憧れている、というのを感じます。

西田 DUALはまさに、子育てし「ながら」仕事をするファミリーに向けたWEBサイトですね。

羽生 DUALでは、「仕事も子どもも、両方とても大事」というのを、大きい声で言っています。働く人には、「私はこういうふうに子どもとの時間を確保しています」というのを堂々と言ってほしい。今まで社会には子どもの話を大っぴらにできないという雰囲気があったと思います。会社内はもちろん、地域社会でもいろんな人がいるから、という理由で。しかし、それでは逆平等です。

 今までオープンにできなかったところに、風穴を開けることが大事。「子どもはかわいい」「仕事をしながら、子育てをしている」ということをどんどん言っていただけると、後から続く人が、勇気が出ると思います。

細川 私も子育てしながら仕事をしていて、先輩のちょっとしたひと言にずいぶん勇気づけられました。女性国会議員のなかにも、子育て中や子育て経験者がたくさんいます。

 参議院議員の猪口邦子さんは、政治家になる前、娘さん2人を育てながら、ずっと上智大学で教鞭をとっていました。インタビューに伺ったときに、「女性は子育てや介護など、どうしても仕事に専念できないときがたくさんある。でも、周りのちょっとした環境の組み合わせによって、仕事に没頭できる時間ができることもある。そのときに、集中して人の10倍も100倍もやると、専念できない状態になったときも、蓄積でなんとか食いつないでいける。今はできないと思うかもしれないけど、できるときが絶対来るから」と言っていただきました。息子がまだ赤ちゃんのころだったので、涙が出るほどうれしかったですね。

羽生 人生の先輩のひと言は心強いですね。