スムーズに両立している人なんて誰もいないから、困難を突破して

細川 福島瑞穂さんにも娘さんがいて、女性の権利や男女平等を主張して、夫婦別姓の事実婚の方でも、子育てをしながらの仕事はやっぱり大変なんですね。あるとき、自分が担当する裁判のあと、どうしても、そのまま家族旅行に行くスケジュールになってしまったそうです。「仕方なく娘を裁判に連れてったのよ。ここにおとなしく座っててねって言い聞かせました」という話をお聞きしました。

 申し訳ないと思う気持ちを抱え、周りの方の理解を得て、本当に苦労しながら、なんとか突破してきているところは誰しも同じなんだなと、つくづく感じました。私自身も非常に申し訳ないという気持ちにさいなまれながら、どうにもならずに仕事場に子どもを連れて行ったこともあります。申し訳ないし、つらいんだけれど、そこを頑張り通す女性の強さが大事。スムーズに両立している人なんて誰もいないので、いろんな困難があっても突破をしてほしいと思います。

西田 羽生さんはどんなふうに困難を乗り越えていますか?

羽生 月〜金曜、毎日義理の母にお願いして修羅場になるなど(笑)、試行錯誤してきましたが、今はだいぶ落ち着きました。

 地域のシルバー人材センターの方3人にお願いして、一人はお迎えだけ、居酒屋の女将さんだった方には火曜日の夕食、お手玉の上手な方には水曜日の見守り、義理の母には週3日だけ来てもらうというペース。和室に布団を並べて、その日の気分で自由な場所に寝るようにしてるんですけど、家に帰って娘だと思ってギュ〜とやったら義理の母だったなんていうことも(笑)、今では楽しく過ごせています。

 時間、物理的な面はうまくいくようになってきましたが、つらいのはやはり心理面。自転車の前後に子どもを乗せて保育園に行くときに、9時半から超重要な経営会議が入っているというような日にかぎって、「お母さん、行かないで〜」と泣かれたりする。そのとき、ちょうど目に入ったのが、コーヒーカップの遊具がある小さな広場で、5分くらいだったら大丈夫と判断し、自転車をキュッと止めて、一緒にコーヒーカップに乗ったんです。 全力で回して、私のほうが楽しんじゃいます。そうすると、娘が「お母さんもういいよ、行ってらっしゃい」って。コーヒーカップの場合もあるし、そこらへんでギュ〜っていうのもあります。

西田 夫婦間でもそうだし、子育て、介護、仕事においても、相手にちゃんと振り向いてあげるっていう行為が、大事なんですよね。細川さんが、子どもを預けるときに心がけているのはどんなことですか?

細川 息子がそこへ行くのが楽しいかどうか。私の仕事を渋々待っているとか、仕事があって仕方なく預けられているというようにならないようにしました。男の子で一人っ子なので、一緒に男の子の遊びをしてくれる大学生のお兄さんに頼んだりもしました。将来、親と子でなく、その間のお兄さん的存在で相談できる人がいたほうがいいかなと思ったので。いろんな人脈を駆使しながら、大学生のお兄さんを紹介してもらって、勉強を教えてもらうのでなく、その人自身が愛情いっぱいで育ったような人に来てもらいました。誰でもいいというふうにはしませんでした。