業績に結びつけるには条件がある

 一方で、ワークライフバランスを業績に結び付けるためには条件があると感じます。

 特に強く意識したいのが、「一部の社員のための福利厚生にしないこと」。残業削減や仕事の効率を高める工夫を「育児中や介護中の社員のため」と位置付けてしまうと、当事者以外の社員から不満が募り、組織力はかえって低下します。私の会社では、誰でも早く帰っていいフレックスタイム制を取り入れ、全員に対してフェアであることを明確にしています。

 同時に、組織全体のワークスタイルや風土を変えて結果を出すには、「ある程度の時間がかかる」と覚悟しておきましょう。無駄を省き、部下が能力を発揮しやすい環境を整えたら、部下には必ず「結果を出す」ように繰り返し伝えます。特にチームリーダーには厳しいくらい成果を求める。ここで結果を出さなければ「わがまま」に終わってしまうからです。結果を出すために何が欠けているのか、部下の進捗状況を把握して見極め、効率のよいアサイン、チーム共有ができていれば、おのずと結果が出てくると思います。

 短期的な利益しか求めない人の意見には耳を貸さない勇気も必要です。私自身は社長就任時に、株主などステークホルダーに「業績がついてくるまで3年待ってほしい」とお願いをしました。

 過程で進捗を報告することを怠らず、ビジョンに向かって進めている姿勢を見せ続ける。数カ月で残業時間が半減し、利益が前年比150%以上になった企業もあれば、ダイバーシティを推進し続けて以来利益も売上高も毎年成長し続けている企業もある。私の場合は、2年で株価の業界平均を20%上回るという結果を出せました。結果が出るまでの時間は業界や業務によっても異なるでしょう。まずは期限付きでプランを立て、チームで共有してみてはいかがでしょうか。

(三井物産ロジスティクス・パートナーズ社長、NPO法人コヂカラ・ニッポン代表 川島高之さん)

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