大人のメークは何はなくともツヤ
藤枝さんと矢次さんの動きはなめらかで切れ目なく、気がつくとベースメークに入っている。ここで、この日のキーワードともいうべき言葉が小林さんの口から出る。
「ツヤを出します」
「30代以降はだんだんツヤがなくなっていく。ここでお薦めしたいのは、私の発明品(「ハッピーメイク プリズムエッグ」)。ブラシでなでるようにしていくとツヤが出るんですよ」
「次に使っているのは、私が考案した大ヒット商品のファンデーションです(「ハッピーメイク パールライトベイス」)。最後に仕上げのパウダーですが、ここで注意が必要です」と小林さん。「パウダーは量と質が問題です。はたきすぎると粉っぽくなって、一気に老けて見えます。これが年を重ねた人の悲劇なのね(笑)」
いや、笑い事ではない。せっかくさっきツヤを出したのに、最後のパウダーが多すぎれば、その粉がツヤを吸収してしまうのだという。
続いて眉、アイライン、まつげと流れるようにメークが進み、小林さんがトークでポイントを押さえていく。感情を表すツールである眉を描くときは眉山から、「できれば一直線ではなく少し曲線を入れるといいでしょう」。
アイラインは、まつげの根元近くに。「隠しアイラインを入れることで、いかにもメークしたという印象がないのに、目元が引き締まります」
そしてまつげは少し上向きにカールして、根元からマスカラをつける。「ここで大事なのは、ボリューミーにしないこと。マスカラはブラシを少し拭き取ってから塗るくらいがちょうどいい。そのほうがカール力も持続します」
自分に一番似合う口紅の色は「指先にあり」
そして仕上げの口紅。「口紅の色選びで失敗する人が90%です」と小林さんが断言する。「きっと皆さん、10本近い口紅を持っていますよね? でも自分に合う色が分からない、というときは、小指を第一関節のあたりで軽く絞ってください。そのときの指先の色と同じ色の口紅があなたに一番似合います」
この瞬間、会場中の全員が下を向き、自分の指先を一生懸命に絞って見ていたのは言うまでもない。
「これは皮膚を通して見る血の色で、自然な唇の色なんです。さあ、いかがですか?」という小林さんの声で顔を上げると、気がつけば、ハッピーメイクが完成していた。鏡を渡されて、おそるおそるのぞく山村さん、「わ、いつもと全然違う!」と驚きの声を上げます。大野さんも、「ツヤが違います!」とうれしそうだ。
「お顔のツヤ、違うでしょう?」と、小林さん。「肌のツヤとハリ、透明感のある人が『オーラがある』と言われるのです。そして18歳の頃は、私達みんながこのツヤ、ハリ、透明感を持っていた。何もしなくてもね。そこから、失われていったものを私達プロは復元していくのです」
内側から明るい光を放つような、山村さんと大野さんのメークの仕上がりに、会場から自然と拍手がわき起こった。