【西村則康先生のアドバイス】
 三校の入試傾向を見ると分かるように、難関校と言われる学校の入試には穴埋め問題や記号選択問題はほとんど無く、記述問題が中心となります。記述問題というととにかく解答欄を埋めればいいと「書くこと」に目を向けてしまいがちですが、これらの問題で学校が知りたいのは、なぜそうなったのか、なぜそう思ったのかという「考え方」のプロセスです。

 記述問題に答えるときは問題文をきちんと読み「何が書かれているのか」「何が分かっているのか」「分かっていないことは何か」「何を質問されているのか」などを理解し、論理的に答える必要があります。こうした問題の解き方は何度も繰り返しやることで身に付いていきます。御三家のような難関校を受験するのであれば、その志望校に沿った問題をどれだけ解いてきたかが合否のカギとなるでしょう。そういう点で大手塾の志望別特訓はとても重要になってきます。

 理科・社会については幅広い知識が必要です。これらの教科は暗記で何とかなると思われがちですが、難関校の入試は他の学校ではあまり見ないような題材も出題されるので、単なる知識や暗記だけでは太刀打ちできません。ここで大切になってくるのが、小さいうちから色々な体験をさせたり、世の中に関心を持たせたりするなどの家庭での過ごし方です。難関校に挑戦する場合、大手塾に通う以前の家庭環境、読書経験、社会的な経験など、そこから得られる身体感覚がとても重要になってくるのです。

入学後に苦労しないためにも、それぞれの校風をよく理解しておくことが大事

中学受験のプロ家庭教師・西村則康先生
中学受験のプロ家庭教師・西村則康先生

 さてそんな難関入試を突破した子達には、その後どんな学校生活が待っているのでしょうか? 西村先生に聞いてみました。

 難関校と言われる男子御三家ですが入試倍率は極端に高いわけではなく、2015年度入試の実質倍率は開成が2.96、麻布が2.31、武蔵が2.81という結果でした。とはいえ受験する子自体が粒ぞろいなので、合格者の学力レベルはかなりの高さであることは間違いありません。しかし、開成でも麻布でも合格者の300名は、入学後は1番から300番という成績順で評価されるようになります。

 「全国で最も東大合格者数を出している開成は『頭のいい子』が輝ける学校です。部活や学校行事も盛んでそこで活躍する子もいますが、それでもやはり頭がいいことが一番尊敬されます。ですから、ギリギリで合格すると入学後は常に劣等感を味わうことになります。それを気にする子には向かない学校だと思います」

 「一方、麻布は学力以外にも何か一つ得意なことがあれば尊敬されます。いわゆるガリ勉より個性的な子が集まる学校で、生徒同士があまり成績のことを気にしません」

 「武蔵は文系指導に力を入れている学校なので入学後はレポートの課題に追われます。そのため、暗記で繰り返し覚える学習時間が他校より少なく、近年は進学実績があまり振るわない状況です」

 …と西村先生が言うように、御三家を目指すのなら入学した後のことも頭に入れておく必要があるようです。とはいえ、いずれの学校も授業内容は充実しており、魅力的な学校であることには変わりありません。

 ちなみに御三家出身者の将来について聞くと、開成は入学後もまじめに勉強する子が多いので、官僚、医者、研究者などに進む人が多いそうです。一方、麻布はまじめと非まじめがいるので職業の幅はとても広く、ユニークな仕事に就く人も多いとか。武蔵は中高6年間に鍛えたリポート作成力を生かして文系へ進む人も多いそうです。

(撮影/稲垣純也)