男子御三家の入試傾向は、考えて書かせる記述式

 難関校の入試はどんな問題が出されるのでしょうか? 各校の入試傾向をまとめてみました(『中学受験 かしこい塾の使い方』web参考)。また、それにはどんな対策が必要か、男子御三家に数多くの合格者を出している中学受験のプロ家庭教師の西村則康先生に聞いてみました。

【開成中学校】
〈国語〉物語文+論説文、または物語文+随筆文の二題構成が主流。文章量が多く漢字の書き取り以外は記述問題。心情理解の記述だけではなく、表現上の技術や立場といった客観的で理知的論理的な記述が求められ、難易度が高い。60分中、読みに10分、記述に40分の配分が目安。

〈算数〉「緻密な作業力」と「問題の条件を正確に読み取る力」を問われる。頻出分野は「平面・立体図形」「規則性」「速さと比」「場合の数」「数の性質」など。大問数は3~4問で、解答用紙は式と答えだけではなく「考え方」を書かせるスペースがある。処理力、試行力、想像力が試される問題。

〈理科〉国語・算数ほど難易度は高くなく、設問は選択問題、記述、作図などオーソドックス。ただし、4分野がまんべんなく出題されるため、幅広い知識が必要。ただし、他校ではあまり出題されない目新しい問題が出題されるため、初めて見た問題への対処力をつけておく必要がある。実験や観察についての問題が多い。平均得点率が8割前後と高め。

〈社会〉大問は2~5題。ただし40分で50~70問の設問があり、知識量が求められる。史料、地図、図表、グラフなど資料の読み取り問題と開成中学の周辺や東京を素材にした「ご当地問題」は毎年出題される。世の中に関心を持ち、幅広く学習することが大切。

【麻布中学校】
〈国語〉長文の物語文1問の大問で設問数は15問程度。漢字と内容理解に関する記号選択問題を除いた約10問が本格的な記述問題で、とにかく書かせる問題構成。心情の背景・内容・理由を要領よく記述する力が求められる。また「この場面や状況においてはこういう心情になるだろう」という想像力も必要。

〈算数〉基本的な知識を元に考えて解く問題。文章題では「速さ」や「割合」が頻出。「図形問題」では他校では見られない斬新な問題が多く、三角形の格子を使った問題は麻布中の特徴の1つ。「数の性質」では条件に当てはまるものを「すべて答える」問題が多い。基本的な知識に加え、問題の流れに沿って論理的に考えて解く力が求められる。

〈理科〉1問あたりの問題文が長く、通常の受験参考書には書かれていない出来事や事象を題材に使う。小学生が知らないことでも問題文を読み進むと理解できる内容に。説明を求める記述問題が必ずある。一般の受験知識に加え「なぜそうなったのか」「だったらどうなるのか」を常に考える習慣が必要。

〈社会〉大問1問であるテーマを設定して地理・歴史・政治の総合問題を出題。記号選択や語句記入はわずかで、記述問題が大半を占める。記述問題には知識を求めるものと社会的な視点で自由記述するものがある。記述の分量は400~800字程度。

【武蔵中学校】
〈国語〉5000~7000文字程度の長文問題1題のみで、字数制限のない記述問題が5問出題される。以前は物語文が主流だったが、最近は随筆文・説明文も出題されている。本文中から重要となるキーワードを見つけ、それを論理的にまとめあげる「要約力」が求められる。また、物語文では主人公の感情を行間から読み取る想像力も必要。

〈算数〉B4用紙1枚に大問1題、計4枚の大問4問スタイル。「場合の数」や「数の性質」など、地道に書き出す「調べ上げ問題」が毎年出題される。問題文以外の空きスペースはすべて解答欄でとにかく書かせる。途中式や考えた痕跡を残すことが求められ、解答に至るまでのプロセスが重視される。部分点でどれだけ取れるかも重要。

〈理科〉大問1はグラフや文章などの資料の読み取り問題か、生物の実験問題、大問2は総合問題、大問3は「おみやげ問題」が出題。「おみやげ問題」はみかんやゴムなど実際に実物を観察させ、観察・考察の結果を記述させる武蔵独自の名物問題。どの問題も記述がメーンで、知識よりも「なぜそうなるのか」を問われる思考力、観察力が求められる。

〈社会〉約2000字の長文を読ませ、さまざまな設問に答える形式で記述がメイン。小学生にはあまりなじみのないテーマも出題されるが、文章をよく読み設問を吟味して考えていけば解答できる。図や統計も登場する。基本知識を元に考える力が求められる試験。