「育児休業期間中、復職後に備えてビジネススキルを高めたい」――。そんなワーママのニーズに応えて立ち上がった「育休プチMBA勉強会」。この勉強会のスタイルやプログラムの特徴を紹介した前回記事「赤ちゃん片手に経営を学ぶ『育休プチMBA勉強会』」に続き、今回は参加したメンバーの声、今後の展望をお聞きしました。

 なお、今回の取材でお話を伺った国保祥子さん、岡野美佳さん、小早川優子さん、梨子本紫保さん、栗林真由美さんは皆さん、現在職場復帰を果たし、17時には退社してお迎えにいくワークスタイル。基本的に実家には頼らずに仕事と子育てを両立しているそうです。

勉強会に参加し「管理職」への興味が芽生えるワーママも

静岡県立大学経営情報学部講師で「育休プチMBA勉強会」代表の国保祥子さん
静岡県立大学経営情報学部講師で「育休プチMBA勉強会」代表の国保祥子さん

 勉強会を主宰する国保さんや、副代表の小早川さんによると「参加者達は最初からマネジメントへの志向が強かったわけではない」と言います。

 「既存の“管理職像”にはハードワークや長時間労働というイメージがあり、憧れを持てないと感じている人が多いようです。そもそも女性管理職のロールモデルも少ないんです。だから、『いずれ管理職になりたい』というより、時間制約がある働き方に変わることに対する不安を払拭したくて参加する方のほうが多かったですね」(国保さん)

 しかし、勉強会に参加した後、「管理職になるのも悪くない」「管理職を目指したい」と考えるようになった方は少なくないようです。

 「『管理者=意思決定者の側に立てば、組織の文化や仕組みを変えられる。働きやすい環境を自らつくれる存在』であるということに気付くんですね」(国保さん)

 「自信も付くようです。それまでは、管理職の仕事には高いスキルが必要で自分はまだまだ……と思っていたけれど、勉強会を通じて新たな視点を持てたり、自分の成長を感じたりすることで、『私にもできるかも』と考えるようになるようです」(小早川さん)

プレーヤー目線から、1つ上、さらに上の階層へ視点が上がる

 次に、実際に、勉強会に参加した皆さんにもお話を伺いました。

 まずは、第1回にも登場いただいた、共同設立者の岡野美佳さん。ネスレ日本株式会社で入社以来一貫して医療用栄養補助食品の営業職を務めており、この4月、第2子出産後の育休を終えて復職しました。岡野さんが第1子である長男を出産したのは29歳のとき。育児に追われながらも、仕事がどんどん楽しくなっていったそうです。

 「育児に時間を取られる分、集中力が高まって濃密な仕事ができるようになりました。また、子育てを経験することで色々な立場で働く人の気持ちが分かるようになり、幅の広い気配りができるようにもなりました。それによって業績が上がり、仕事が面白くなっていったんです。そうなると、もっと高いレベルを目指したいと考えるようになりました」(岡野さん)

 勉強会に参加したことで、それまでは「プレイヤー目線」でしか物事を考えられていなかった自分に気付いたと言います。

 「ケース・ディスカッションの中で、『あなたが管理職だったらどうする?』と問われて初めて考えたんです。そうすることで、1つ上の階層、さらにその上の階層の人が、何を見ているかが分かり、その結果、自分が何に留意すべきかがだんだんとつかめてきました。営業活動において、顧客は意思決定権を持つマネジメント層の人だとも言えます。そうした人達の視点に立ってみることで、これまでよりも質の高い提案ができるのではないかと思います」(岡野さん)

 「社内でも、復職後、これまでとは異なる角度から物事を捉えられるようになりました。以前はいまひとつ理解できなかった上司の言葉や行動も、『こういう意図があったのか』と納得できるように。また、会議の在り方や進め方などについても、『こうすればより効果的なのでは』と考えられるようになりました。自分の担当業務に限らず、組織としての目標と照らし合わせ、『これでいいのか?』と常に検証する思考が身に付きました」(岡野さん)

 「その結果、自分が考えたことを提言し、いずれは管理職の立場になって、組織にとってプラスとなる仕組みを作っていきたいと思うようになったんです。『皆に貢献できる存在になりたい』という目標ができました。さらに思考を深めるために、ビジネススクールの単科コースで『クリティカルシンキング』の講座も受講しました」(岡野さん)

「育休プチMBA勉強会」発足のきっかけをつくった、ネスレ日本株式会社に勤務する岡野美佳さん
「育休プチMBA勉強会」発足のきっかけをつくった、ネスレ日本株式会社に勤務する岡野美佳さん