9つの挑戦課題を意識し、自分に欠けているものを強化

 2つ目のセクションは「リフレクション」です。各自が議論を振り返り、9つの挑戦課題のうち、自分にとって得意なもの・欠けているものを自覚し、今後の課題として認識していきます。9つの挑戦課題とは、下図の通りです。

 「例えば“プレマネバランス”とは、プレーヤーとして目標を追う役割とマネジャーとしてチームを管理する役割との心理的・時間的バランスを取っていくこと(中原[2014])ですが、本勉強会ではこれを応用して、制約人材が自分で担うべき業務と周りの力を借りたほうが組織として効率的に成果を出せる業務とを分離して実行できる思考のこととしています」(国保さん)

 「リフレクションのセクションでは、それまでのディスカッションを振り返って自分の思考のクセを内省してもらいますが、参加者は自分の考え方がかえって組織の効率を低下させていたりすることに気づきます。気づくことで意識が変わり、意識が変わることで行動が変わり、復職後に活かせる実践力となっていきます」(国保さん)

 これら9つの課題のうち、「育休プチMBA勉強会」に参加するママ達の多くが「自分に不足している」と感じた項目はどれなのでしょうか。

 「2の『目標咀嚼』、3の『政治交渉』、8の『組織全体の構造を踏まえた意思決定と行動』あたりを、自らの課題と捉える人が多いですね。中でも8を課題とする人は多いです。女性は問題が起きたとき、人間関係上のコミュニケーションや配慮によって対処しようと考え、構造や仕組みを見直そうという発想までに至らない人が多いと感じます。ただし、それは女性の先天的な特性ではなく、これまでそういう思考のトレーニングの機会が無かったからだと思います。自身が意識することで、いくらでも鍛えられるでしょう」(国保さん)

 「育休プチMBA勉強会」に参加したワーママ達は、これまで意識していなかった「経営」の視点を持ったことで、仕事に対する姿勢や今後のビジョンに変化があったようです。次回は、勉強会に参加したメンバーの声をご紹介します。

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【参考文献】

・中原[2014] 『駆け出しマネジャーの成長論 ― 7つの挑戦課題を「科学」する』(中公新書ラクレ)
・Wagner and Sternberg[1985], Practical intelligence in real-world pursuits: The role of tacit knowledge.
・Wagner[1987], Tacit knowledge in everyday intelligent behavior.
・金井・楠見[2012] 『実践知 ― エキスパートの知性』(有斐閣)

(ライター/青木典子、撮影/鈴木愛子、平山 諭)