「ディスカッション」+「リフレクション」をセットで実施

 プログラム内容は、大きく2つのセクションに分けられています。「ディスカッション」と「リフレクション(振り返り)」です。

 最初に取り組むのは、ケースを基にした「ディスカッション」です。

 参加者は各回約 20 人。4~5 グループに分かれ、配布されたケースを読み込んだ後、課題に対する自分達の意見を発表し、付箋に記載します。その後、ファシリテーターの下、参加者全員でディスカッションを行います。ファシリテーターは参加者から意見を聞き出したり、クリティカルシンキングを促したりして、参加者の思考を深めるようサポートします。

 実際に取り上げたケースの一例は、次のようなものです。

 「あなたは銀行に勤務する預金課長です。支店長から3つの問題について小言を言われました。それを受けてどう行動するのが適切でしょうか」
 「育児中の女性が定時で帰った後、他の社員が代わりにお客様からのクレームに対応することになり、不満を抱えています。あなたが課長ならどう対応しますか」
 「育休から復職して半年後の社員が退職を申し出てきました。相談者の課題は何でしょうか。あなたが上司ならどう対応しますか」

交渉トレーナーであり、「育休プチMBA勉強会」副代表の小早川優子さん
交渉トレーナーであり、「育休プチMBA勉強会」副代表の小早川優子さん

 こうしたケース・ディスカッションの狙いを、国保さん、そして国保さんと同じく慶應ビジネス・スクールでMBAを取得し、現在は3人の子どもを育てながら交渉トレーナーとして活躍する、「育休プチMBA勉強会」副代表の小早川優子さんにお聞きしました。

 「ケースの現象を、個人的な視点だけでなく、組織全体の構造を踏まえた経営者の視点で捉えて、解決策を考えることを意図しています。特に、ケースのストーリーを設定する際には、“育児中の社員”を何度か登場させています。同じ組織の中でも、当事者が見ている世界と、上司や同僚が見ている世界は全く違うということを、復職前に認識しておくことが大切だと考えたからです」(国保さん)

 「このケースに取り組むことを通して、参加者は“制約人材”となる自分が、会社から『期待されない』『扱いにくいと思われる』可能性があることを自覚するようになります。しかし、だからといって会社に対して『申し訳ない』と思いながら萎縮して働くのではなく、『では、どうすれば自分が戦力になれるのか』を考え、自ら提案していけばいいのです。そうした思考を持ち、復帰後に実践していけるようになることが、この勉強会での目標の一つです」(小早川さん)

 「時間に制約がある中で、自分の仕事を何とかうまくやりくりしていくだけでなく、他の社員にとってもやりやすい仕組みに変えていけばいいんですよね。その思考と実践力を養うことを目指しています」(国保さん)