宮西達也(原作・脚本)
 1956年12月23日生まれ、静岡県出身。日本大学芸術学部美術学科卒業。人形美術、グラフィックデザイナーを経て、絵本作家になる。主な作品に、『おまえうまそうだな』(けんぶち絵本の里大賞)、『きみはほんとうにステキだね』、『ペンちゃんギンちゃん おおきいのをつりたいね!』(以上ポプラ社)、『おとうさんはウルトラマン』、(けんぶち絵本の里大賞・びばからす賞)『帰ってきたおとうさんはウルトラマン』、『パパはウルトラセブン』(ともにけんぶち絵本の里大賞)、『うんこ』(けんぶち絵本の里大賞・びばからす賞)、『大きな絵本 にゃーご』(第38回造本装幀コンクール展 読者推進運動協議会賞)などがある。現在は大型絵本の制作や、講演会などで全国を飛び回る生活を送っている。今年3月より、初の全国巡回展「宮西達也ワンダーランド展 ヘンテコリンな絵本の仲間たち」を開催。

──映画『あなたをずっとあいしてる』では、脚本も書いていらっしゃいますが、脚本の執筆作業はいかがでしたか? 大変だったことや楽しかったことを教えてください。

 「絵本とは書き方が全く違いました。僕は脚本を書いたことがなかったので、共同脚本の方に書き方を教えていただきました。映画の脚本というのは、絵本や童話や小説などとは違って、その場面を表したりするなど、本当に難しいんですよね。でも、いつもしていることと違うことをするときって、ちょっと刺激があって楽しいです。だから今回、初めて脚本を書かせていただいて、難しいこともあったけれど、楽しい思いをすることの方が多かったです」

──何か新しい発見はありましたか?

 「絵本のときよりも、もっと恐竜になり切ったりしましたね。空を見上げる場面を書くときは、アトリエにいても天井を見上げたりしました。それぞれのキャラクターを思い浮かべながら、お母さんになってみたり、お父さんになってみたり、主人公のトロンになってみたりね(笑)。そうしたら、『ああ、こんな風に見えるんだな』と場面が浮かんできたんです。映画を見るときに、できるだけ分かりやすいようにと思いながら、書いていきました」

意識して描いた流れ星 映画の魅力の一つに

──本作は、<ティラノサウルス シリーズ>の中から、『あいしてくれてありがとう』と『であえてほんとうによかった』を基に構成されていますが、オリジナルストーリーも満載で、映画ならではの迫力とスケール感に、大人でもとても興奮しました! 完成した映画を見た感想を教えてください。

 「文章で書いたものを、監督さんやアニメーターの方たちが形に表してくださって、映画が完成しましたが、僕が考えていたものとは良い意味で違っているところもあり、素晴らしいものに仕上がっていると思いました。ストーリーを分かっている僕が見ても、面白かったです! みなさんに楽しんでもらえると思います」

──映画ならではの魅力が発揮されていると思う、お気に入りのシーンは?

 「僕の絵本には星がいっぱい描かれていますが、今回は脚本を書いているときから、特に流れ星というものを意識していたんですね。絵本では止まっている星が、映画ではいいところで、いい具合に流れてくる。そこは良かったですね!」

──流れ星は、映画の中で重要な要素ですよね。

 「そうなんです。流れ星は“赤い実”と同じくらい重要なので、意識して見てほしいと思います」

──先生も声優として参加されたとお聞きしましたが、どこで登場したのかちょっと分からなくて……。

 「うま過ぎて!?(笑)」

──そうだと思います(笑)。

 「僕はすぐに分かりましたけどね、情けなくて(笑)。最後の方で、『急げ、急げ、どんどん運ぶんだ』って言っているのが僕です」

──どんなシーンかはネタバレになるので伏せておきますが、そのセリフが出てきたら宮西先生だと思って見てみると楽しいですね! お気に入りの声は、どのキャラクターですか?

 「バルドの声を演じた山口勝平さん。山口さんは映画をしっかりと締めてくださっていましたね。前作の『おまえうまそうだな』で主人公ハートの声を演じていただいて、今回も山口さんに出ていただきたいと希望しました」

──さすがはベテラン声優さんですよね。

 「そうですね。あと、プテラノドン役の速水けんたろうさんの声もカッコよかったです! 僕、プテラノドンはカッコよく書きたかったんですよ。声もやりたかったですねぇ(笑)」

──渡辺満里奈さんのセラ役はいかがでしたか?

 「優しいお母さん役として、素晴らしかったと思います。満里奈さんと対談したとき、彼女はこの映画のタイトルがとても好きで、お子さんにも『あいしてる』ってよく言っているとおっしゃっていて、お子さんも『ママ、あいしてるよ』って言うそうなんです。すてきなご家族ですよね」

──素晴らしいですね! 私は言っていないです……。『あいしてる』って、魔法の言葉ですね。先生の絵本のタイトルは、仕事や育児でイライラした気持ちを柔らかくするような魔法の言葉が多いですよね。

 「なかなか言いにくい言葉だとよく言われますが、『あいしてる』とか『ステキだね』って言われたらうれしいでしょう? 言わなくても分かっているだろうというのはダメだと思います。最初はドギマギしちゃうかもしれないけど、ぜひ言ってみてください。そのうち慣れますから」

──はい、頑張ります! 『あなたをずっとあいしてる』は、ぜひ親子で映画館に見に行ってほしい映画ですが、見た後に親子でどんなことを語り合ってほしいでしょうか?

 「この映画にはトロンの家族が出てきますが、見た後に『うちのお父さんってこうだね』『お母さんはこうだね』『家族ってこうだね』という風に、家族みんなで自分達に照らし合わせながら語り合ってくれたらうれしいですね」

子ども時代の思い出がクリエイター心の根幹にある

──宮西先生の絵本を読んで成長する子ども達は、世界中にたくさんいます。子どもだけじゃなく、親も一緒に読んで心を豊かにしていただいています。そんな絵本をたくさん執筆されている先生の心を豊かにするものとは、どんなものでしょうか?

 「そうですね、やっぱり自分の子ども時代のことでしょうか。子ども時代を過ごした田舎の柿田川とか、山とか野原とか、そこで走り回ったこととかね、親からかけられた言葉とか、友達同士の会話だとか、そういったものが心を豊かにしていると思います。だから、子ども時代はすごく大事なんですよね。お父さん、お母さんは子どもをたくさん褒めてあげたり、いろんな体験をさせてあげたりしてほしいなと思います」

──ありがとうございます。では最後に、日経DUALの読者にメッセージというか、励ましの言葉を頂けますか?

 「僕も子育てで感じたことですが、親が大変な分、苦労した分、子どもは良くなります。忙しくて大変な毎日だと思いますが、子どものために、できるだけ時間を使ってあげてください。それは子どものためになるだけじゃなく、親自身も成長させるし、後できっと良かったと思える日が来ます。だから、頑張ってくださいね」

(インタビュー写真【渡辺満里奈】/小野さやか スタイリング・ヘアメイク/三上津香沙)
(インタビュー写真【宮西達也】/正田利弥)