就学前の子どもを保育園に預けて共働きしているデュアラー家庭にとって、一番悩ましいのが子どもの病気だ。
37.5度の熱があって保育園は無理。誰かついていなくてはいけないのに夫婦そろって今日だけは休めない。祖父母も遠方に住んでいる。病児保育施設は車では行きづらいところにあって高熱の子どもを満員電車に乗せなければならない……。
保育園で子どもが病気をもらってくることは日常茶飯事。こういった八方塞がりに陥る前に、できるだけ対策を講じておきたいところ。
『日経DUAL』が注目したのは、従来の施設型ではなく、病児の自宅でみてくれる「訪問型病児保育」。10年前から訪問型保育を始めた草分け的存在が、認定NPO法人フローレンスだ。フローレンスの病児保育事業部マネージャー、赤坂緑さんに伺った。
自宅で病気の子どもをみてもらう「訪問型保育」とは?
──現在、日本で病児保育の課題となっているのは?
フローレンスが始まった10年前から変わらず、お子さんの数に対して病児保育施設が足りないということですね。病気のお子さんを預かってくれる場所が圧倒的に足りません。
全国に認可保育所は約2万4000カ所。内閣府の資料によると、それに対して、補助金を受けている病児保育施設は1102カ所しかありません。
こういう状況だと、お子さんが病気になった場合に預けることができないので、親が休んだり、祖父母を頼ったり、自分たちで何とかやりくりしている人がほとんどです。
お子さんが熱を出すというのは特別なことではありません。だからこそ仕事との両立が難しいんですよね。
──施設型病児保育と訪問型病児保育の違いやメリットは?
施設型は小児科の病院の隣に併設されていることが多く、これはメリットだと思います。でも施設という「箱」を作ってしまうと、運営費用がかかります。
フローレンスのような訪問型だと、お布団や備品などもすべてそのお宅に用意されているものを使うので、こういった「箱代」がかからないのがメリットとして挙げられます。
また、施設が近所にある場合は大きなメリットですが、離れた場所にある場合、病気のお子さんを連れていくのが大変です。さらに、施設型では受入数に限りがあり、定員以上は預かれないというデメリットもあります。
このあたりのデメリットをご自宅に伺うことで補うのが訪問型病児保育です。
──フローレンスの病児保育の特長は?
ご自宅に「こどもレスキュー隊員」(保育スタッフ)が行くことで、病気のお子さんは自分の家でゆっくり休むことができます。こどもレスキュー隊員はプロ意識が高く、「その日一日、その子が安心してゆっくりできる存在、頼りにしてもらえる存在でありたい」と考えて保育に臨んでいます。
お子さんの病状は刻一刻と変わるため、利用予約やキャンセルにも柔軟に対応します。前日の15時から予約でき、当日朝8時までにいただいたご依頼には100パーセント対応します。朝7時まではキャンセルも無料です。
夜にお子さんが熱を出したら予約を入れて、朝になって熱が下がったらキャンセルするという使い方をされる人も多いですね。当日までに3分の1くらいキャンセルが入り、それと同じくらい当日の朝、新たに予約が入る感じです。
──自宅で用意するものは?
お布団などのお子さんが寝るスペースと、リビングなどの保育場所。それ以外の場所にはこどもレスキュー隊員は立ち入りません。
おもちゃも基本的にはご自宅のものを使います。折り紙など小さいものは持ち込むことがあります。
それと、お子さんのお食事やおやつですね。目を離さないため、危険を避けるためにも、火を使わないで食べられるように用意していただいています。お子さんが眠っているときも、5分ごとに呼吸確認をします。