赤ちゃんが欲しいけれど高齢出産といわれる年齢になってしまった、2人目不妊に悩んでいる、高齢妊娠・出産にどんなリスクが伴うのか知りたい……。30代後半からの妊娠・出産に参考になる様々なアドバイスや情報をお届けしていくこの連載。第1回のテーマは、栄養療法に基づく体質改善です。前回の記事(「妊娠率アップ 35歳からでも効く食事とは?」)に続いて、栄養療法の専門家で、新宿溝口クリニック・チーフ栄養カウンセラーの定真理子さんに「ママになるために取るべき栄養素」を伺いました。

健康診断では分からない「隠れ貧血」が妊娠を遠ざけている

 前回、妊娠と栄養には密接な関わりがあることをお伝えしました。ここからは、妊娠を希望する方に知っておいてほしい「ママになるために取るべき栄養素」について、ポイントを絞ってご紹介します。

(1) 鉄

 鉄は赤血球をつくったり、体内へ酸素を運んだりといった重要な働きをするほか、子宮の粘膜をつくる材料にもなるので、鉄が不足すると受精卵は着床しにくくなります。子宮が赤ちゃん(受精卵)を迎えるベッドだとしたら、鉄は居心地のいいふかふかのベッドをつくるのに欠かせない栄養素です。

 女性は毎月の月経で鉄が失われるため、妊娠可能な年齢の女性のほとんどが鉄欠乏に陥っていると言えます。

 体内の鉄の6~7割は血液に含まれるヘモグロビンの成分として、残りの2~3割は脾臓、肝臓、小腸粘膜などに「貯蔵鉄」として蓄えられています。体内の鉄が不足すると、まず貯蔵鉄から不足分が補われて、血液中に供給されます。

 ところが、一般的な健康診断や献血では、赤血球中のヘモグロビンやヘマトクリットの数値を調べるので、貯蔵鉄が不足していても気づけません。このように、貯蔵鉄は減り始めているものの、まだ貧血症状が現れていない段階を「潜在性鉄欠乏」といいます。

 栄養療法では貯蔵鉄の数値「フェリチン」の値に注目します。不妊患者の血液を検査すると、フェリチンが不足していることが多いです。フェリチン不足は、以下のような原因不明の体の不調を引き起こします。

 このような症状がある人は潜在性鉄欠乏が疑われます。フェリチンの値は通常の血液検査では検査項目に含まれないので、気になる人は検査をするといいと思います。妊娠を望む人なら、フェリチンの数値は60ng/ml以上は欲しいところです。

 食物に含まれる鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があります。日本人の食べる食材には非ヘム鉄が多く含まれますが、吸収率が高いのは肉や魚に含まれるヘム鉄です。

非へム鉄
 野菜や海藻などの植物性食品に含まれ、吸収率は5%以下と低い。食物繊維や、コーヒー・お茶に含まれるタンニンが吸収を阻害してしまう。非ヘム鉄が多い食材はほうれん草、きくらげ、プルーン、海草類など。

ヘム鉄
 肉や魚などの動物性食品に含まれ、吸収率は10~30%と、非ヘム鉄の5~10倍も吸収される。豊富な食材はレバー、赤身肉、鰹、煮干し、せんまい、あさりなど。

 吸収率の高いヘム鉄を含む食材を、意識して取ることをおすすめします。毎日レバーを食べるのは難しいかもしれませんが、意識して3食とも肉を食べるようにすると、2~3日で体がポカポカと温まるのを実感できると思います。