現在、音楽活動をしながら長男・礼夢くん(らいむくん・10歳・小学5年生)を育てている、SPEEDの今井絵理子さん。息子さんは生まれつき、耳に障がいがあります。「耳が聞こえないのは、個性の一つにすぎません」と明るく語る、今井さんの子育てに迫ります。前回記事「今井絵理子 息子の耳が聞こえないことが分かった日」に続く、連載・第2回では、礼夢くんが2歳になったころからの、親子間でコミュニケーションする方法を模索していた日々を語ります。

「礼夢くんには、内耳が無いかもしれない」

 生まれてすぐの検査で耳が聞こえないことが分かった息子の礼夢。お医者様は、「すぐに礼夢くんに合う補聴器を付けましょう」と言ってくださいました。補聴器を付ければ、音が聞こえるかもしれない――。希望の光が見えた気がしました。

 そのころ、夫が知人から有名な耳鼻科医の方がいると聞いてきました。もう一度検査したら、違う結果が出るかもしれない。そんなわずかな期待とともに、加我君孝先生(東京大学名誉教授/東京医療センター・臨床研究〈感覚器〉センター名誉センター長)のもとを訪ねました。

 予約を入れてから数カ月。待ちに待った診察で言われたことは、「礼夢くんには、内耳が無いかもしれない」ということでした。内耳は耳の一番奥にあり、蝸牛という、聴覚に関わる部分や平衡感覚に関わる三半規管がある部分です。

 聞いた瞬間の私は「ナイジって、何?」。初めて聞く言葉にちんぷんかんぷん。でも、ナイジという大事なものが無いかもしれないということは、やっぱり、全く聞こえないのかもしれない……。まだ小さいからナイジが無いのかな……。聞こえないって、どういうことなんだろう……。ぼんやりとそんな思いがよぎりました。

 ただ、加我先生に「早く分かってよかったね」と言われたことは、救いでした。難聴児やろう児には、早期発見と早期教育が必要で、発見が遅れるほど、言語の発達に大きく関わるとのことだったんです。

 結局、礼夢は生後6カ月目から補聴器を付けました。そして2歳になったとき、人工内耳を付ける手術を受けることを考えました。

 人工内耳とは、内耳の中に電極を埋め込み、音の信号を電気信号に変えて脳に伝えるための器具です。手術のために精密検査をする中で、加我先生にはっきりと言われました。

  「礼夢くんには、内耳と聴神経がありません」