くだらなくて壮絶な日常を分かってくれる人がいる幸せ

―― 今後、成長したぺ~ちゃんが、本を読んだり映画を見たりすることもあるでしょう。

清水 反抗期になったら「オヤジ何やってるんだ!」と怒るかもしれない(笑)。彼の出生に関する話ですし、彼自身、すでに大きなものを背負っちゃっていますから、そのことに関して僕は何の申し開きもできません。ひと波乱あるだろうなという気はします。

 ただ、本という形にまとめたことで、彼に母親のことをきちんと伝えるという一つの責任を、父として果たせたという思いはあります。やはり子どもが親を亡くす――特に男の子が物心のつく前に母親を亡くすというのは、相当つらい状況だと考えます。それをどう受け止めるかは彼の問題でも、親としては考えるための材料をそろえておいてあげたいと思います。

 だから、本を出すまでは必死でしたね。もっとも、本はぺ~のためだけでなく、両親、友達、知人ら、僕達のことを心配してくれた人達すべてのためなんですが。お礼というか、一つの区切りというか、何か形にしたかったんです。ブログという形でみんなに事実を公表し、巻き込んでしまったことの責任でもありました。

―― 映画を見て、一歩引いた立ち位置から自分に起きたことをかみ締めてみて、改めて気づいたことはありますか。

清水 先日、映画のパンフレット用に、尊敬する編集者の渡辺祐さんからコラムを寄せていただいたんです。そこに「くだらなくて壮絶」という言葉があったんです。

 本当にその通りだったんです。星野源さんの『くだらないの中に』という歌を引き合いに出してくださったんですが、一見くだらないと思える日常の中にも実は壮絶な瞬間が眠ってる。逆にがんという壮絶な状況でも、くだらない日常からは逃れられない

 笑えるのか、泣けるのか、この映画を見て観客の皆さんにどう感じていただけるか分かりませんが、少しでもその感覚が伝わったらいいなと思います。

いずれ本を読んで息子が何を感じるかは分からないが、考える材料を残すのは親としての責任、と清水さん
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