子育てにも夫婦関係にも正解はないけれど、愛情が根幹にある
―― 子どもに関しては、生まれてきたときはただもう健康に育ってくれればいいと思っていたはずなのに、気がつくと様々な欲が出てくるものですよね。
清水 そうなんですよね(笑)。でも、ヨメに起きたことを考えると、やはり健康でスクスク育ってくれればいい、という思いは強いですね。そして、自分の意志で好きなように生きてほしい。親の押し付けにならないようにするためにできることは、きちんと子どもの話を聞くということでしょうか。
―― 子育てと夫婦関係、共に「正解」はないということ以外に、共通していることは何でしょう。
清水 愛情……でしょうか。この人のことは絶対に裏切れない、という愛情。映画でヨメのお父さんが「娘は私の誇りです」と言いながら泣いてしまう場面があるんです。あれは実際にもあったんですが、僕は義父の震える背中を見て「この人をこれ以上傷つけてはいけない。絶対裏切ってはいけない」とつくづく思ったんです。
友達や家族の、ヨメに対する「何とかしてあげたい」「励ましてあげたい」といった感情。それも全部、愛情だと思うんです。親から娘への愛情、友人同士の愛情、ヨメからぺ~への愛情、夫婦の愛情……当時周りでは色々な愛情が乱反射していました。僕はその中心にいて、みんなの愛情がうまく回るよう愛情の交通整理をする役割だったんです。全員の愛情が損なわれることなく伝わる状況にしたいという思いで必死でした。
そう考えると、愛情がすべてを動かしているのかなと思います。愛情ってそれが過剰になると、ときに滑稽なことも巻き起こしますし、悲劇も起こします。でも愛情があったから、僕達は何とか最後まで走り抜くことができた。やはり愛情がすべてを動かすエネルギーだったと思います。
―― 後編では、表に出してフーフー言うことの大切さについて、映画に込めたかったメッセージについて、清水さんに伺います。
(文/牧口じゅん 写真/平岩享 編集/Integra Software Services)