―― 今のぺ~ちゃんの様子は?

清水 スクスクと元気に育っています。ヨメが他界したのは1歳になる前なので、彼女のことを覚えてはいないと思いますけれど、まだ面と向かって息子とこのことについて話したことはないんです。私は一昨年再婚しましたが「ぺ~には、おじいさんもおばあさんも3人ずついるんだよ」と話してあります。それがどういうことなのか、どこまで理解しているかは分かりません。お年玉をいっぱいもらえて、休みになれば色々な所に連れていってくれる優しい祖父母がたくさんいると感じているのではないでしょうか(笑)。

ベースにある価値観は人それぞれだ、と死生観を通して実感

―― 本の中では、病気の奥様とどう接するかを通して、優しさについて考えたと書いてあります。「優しさとは、自分がやってほしいことを他人にやり、自分がやってほしくないことを他人にやらないことと解釈していたのですが、どうやらそれも怪しくなってきた」と。それは子育てに通じるところもあるのかもしれません。

清水 人というのは、ベースの価値観が全然違っていたりする。特に、がんという局面では、死生観を通してその違いが鮮やかに出たと思うんです。告知をするのかしないのか、本当の病状を知らせるべきか知らせないべきか、ヨメの両親や友人達にも相談して、意見を聞きましたが、答えがみんな違うんです。それぞれが「自分だったらこうしてほしい」としか言えないんですよね。

 僕自身は、すべてを知ったうえで自分で決断したいと思う。でも、だからといって闘病するヨメにそのやり方を押し付けるのは厳しすぎる、という意見もありました。治療法についてはヨメの意見を尊重したいと思っていましたが、もっと僕が主導権を握って決めてあげるべきだと思った人もいたでしょう。実際、「こうしたほうがいい」と積極的に決めてあげたほうがよかったのかなと思うことも、正直ありました。どれが正解だったのか、いまだに分からないことも多いです。

 ただ、正解は一人ひとり違うんだなということは実感しました。育児に関しても、夫婦の間で意見は絶対に違います。だから、自分の考えを押し付けることはもちろん、相手も同じ考えだと思わないほうがいい。「僕はこう思うし、当然君も同意見だよね」と簡単に決めつけるのは危ういことだと感じました。

映画では生まれたばかりの息子ぺ〜も甘えん坊な5歳になった、と清水さん
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