ユーコの気持ちを考えたら、引き裂かれるような気持ち(永作さん)
――本作のコウタとユーコは、17年間という長い間友達で、恋人期間を飛ばして夫婦になりました。2人の関係を、どのようにとらえて演じられましたか?
佐々木「ユーコはパワフルで、ガンガン行くタイプで、コウタはのんきな性格。コウタは17年間、彼女に引っ張ってもらっていたんですね。結婚してからは、ユーコがガンガン来るのをかわせたり、やり返せたりする力も付けていった。友達関係の時よりも密になった一方、ちょっと引いて離れて見ている感じも、とてもいい。そんな夫婦関係だと思って演じました」
永作「2人の距離感が本当に素敵だなと思いました。思い合っているのに依存しない関係が素敵だと思います。17年間の友達時代も、気になってチラチラ見ているし、お互いに君のこと全部分かるよって思いながら、長い時間、盗み見してきた感じなんですよね。だから、恋人同士でいるよりも、相手のことをちゃんととらえていたと言うか、間接的な関係が素敵だと思って演じました」
――ようやく結婚した2人に子どもが誕生しますが、ユーコは9カ月後に他界してしまいます。突然、シングルファザーになってしまったコウタと、幽霊となって現れ、見守るしかできないユーコ。演じていて、どのようなお気持ちでしたか?
佐々木「ヨメ(ユーコ)が亡くなってから、ペ~(息子)を抱えて、仕事はどうしよう、残業はできないし。執筆したブログは本になるかどうか分からない状態で右往左往する中、彼には頼れる自分の両親、ヨメの両親、そして仲間がいたんですね。一人ではどうにもならない中、支えてくれる人がいることのありがたみを、役を通して知りました」
永作「女の人でも一人で子育てするのは相当大変ですから、ダンナ(コウタ)は泣いてもおかしくないと思いました」
佐々木「もし死んだのが自分だったら、ヨメはどうなっていただろうと、彼は考えていたと思います。ものすごくもがいたんですね。もがいていたから、ヨメが(幽霊となって)出てきたんでしょうね」
永作「すごく深刻で切実な話だと思って、自分だったら無理だろうなと思いましたね。もちろん絶望的になるだろうけれど、そこで『ちょっと待って、誰かいるでしょう?』って周りを見てみる。働きながら、一人で子どもを育てるなんてやっぱり難しいと思うので、協力してくれる誰かを見つけるしかないですよね。なかなか困難なことですが、親になった限りは諦めるわけにはいかないですから」
――永作さんは、この役を演じるにあたって、ご自身の子育て経験を振り返ったり、母親ならではのご自身を反映したりした部分はありましたか?
永作「今回の役は、自分とはちょっと環境が違うので、あまり自分のことを反映したりはしなかったですね。ユーコは病気で力もないし、子どもを上手に抱いたり、母親としての経験を反映させたりする演技は必要ではなかったんです。ただ、子どもを持つ身としては、9カ月しか子育てできなかったユーコの気持ちを考えると、引き裂かれるような気持ちになりました。考えただけで、心がギュッとなってしまいます……」
――佐々木さんは、ご自身がパパになったところを想像されたりしましたか?
佐々木「笑いの絶えない家族だったらいいかなぁと思ったりはしましたね。コウタの段階では、まだ理想の父親像も見えてきていない状態だし、想像するところまではいきませんでしたが」
永作「でも、佐々木さんがペ~を抱っこしている感じを見ましたが、怖がっていませんでしたよね。おっかなびっくりで抱っこする人もいるじゃないですか。だから、もしも佐々木さんのところに子どもが来たら『いいよ、今日1日くらい』ってなりそう(笑)」
佐々木「確かに、ペ~の笑顔には救われたな。撮影で『やった、いい画が撮れた!』ってなるのは、実際に子どもを育てている親も、そういう思いなんだろうなと思いました」